幻の虎戦士。 (ページ42)

今日:2 hit、昨日:53 hit、合計:59,318 hit

裏切りの過去。ページ42

Aside

「俺らのことを信じてみてよ。」

かつての私の親友もそう言った。

野球がきっかけで仲良くなった友達。野球には凄く熱心で、私以上に結果を残して、

一番に、私を裏切った。
私が怪我で試合に出られなくなったとき、一番早く私を罵った。

"女のくせに野球してたから、バチが当たった"

それが、私を傷つけて、

その言葉が、耐えきれないストレスとなって、私を苦しめた。

ご飯も喉を通らないくらいになって、ありえないほど痩せてしまった。

人を信じるのを、怖いと思うようになった。

家族すら、信じられなくなった。

「A、最近元気ないけど大丈夫？」

『うん。何もないから。』

親の前では何もないような感じを装って、

辛いときには自分の部屋で静かに涙を流した。

たった一人の、心から信頼できる人に気付くまでは。

「A…嘘つかないでよ。何もないんだったらなんで泣いてるの？」

『……お兄ちゃん…』

「辛いことがあったら話、聞かせてよ。誰に何言われたかは知らないけどさ、Aが苦しむのはもう見たくないんだ。」

問いかけにも答えず、ただ首を横に振った。

『私なんて生まれてこなかったら良かったんだよ。女なのに野球して、皆に迷惑かけて。私なんか、いらないんだよ。』

はじめて口にした、心からの本音。

次は兄にも罵られると思って震えていたら、

何も言わず、私を抱きしめていた。

私が壊れないように、優しく、でも強く。

心を落ち着かせてくれる香り、兄の鼓動の音やぬくもり、

それらが脳内を支配して、混乱させて、

いつのまにか、涙が止まらなくなった。