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ノックをしてからガラガラとその部屋の扉を開けると寝台に座りながら書物を読む姿があった。
「…………し、なずがわ様…!」
その書物から顔を上げて俺を見た彼女は、目をまん丸に見開いて驚いている。
「怪我はァ」
「………あ、えっと…腕の骨を折ってしまったのですが、もう殆ど治ってきているので大丈夫です」
「そうかァ」
気不味い。何を喋ればいいのか、分からねぇ…。
宇髄だったらこういうときどうする?頭でも撫でる?
煉獄だったら「よく頑張った」なんて言って褒めるのか?
伊黒だったら甘味処にでも誘う……?
「あ、あのっ………」
寝台から降りて立ち上がった彼女に、咄嗟に手を差し伸べてしまいそうになったが、我に返り慌ててそれを引っ込めた。
「先日は、身分も弁えずに大変申し訳ございませんでした…っ」
膝に顔がついてしまいそうなほど深く、勢いよく頭を下げる彼女。
「………顔上げろォ」
ゆっくりとあがってきたその顔は、この間のように少し泣きそうで。
「私みたいな隊士が不死川様のような方に気持ちを伝えるなんて…身分不相応にも程がありました。どうか忘れてください、ごめんなさい……」
その顔だ、俺に纏わりついて離れねェのは。
「忘れたくても忘れられねェ」
「…………え?」
「ちきしょォ…責任取りやがれェ」
「えっ…え?……ご、ごめんなさいっ…」
「…………いつ退院だァ」
「明後日、の予定ですが…」
らしくねェ。
俺は、色恋には興味がねぇ。
……………なのに。
「退院祝いに甘味奢ってやらァ」
「………………へ?」
「明後日迎えに来る」
「えっ…、待ってください、それって、」
「ンだよ!?」
「私と一緒に、甘味処に行ってくださるんですか…?」
「そーだよ!行きたくねぇなら辞めておくか?!」
「行きます!行きたいです…!すっっっごく楽しみっ。ふふ」
その時、彼女の笑った顔を初めて見た。
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もみじ(プロフ) - 覚悟を決めし者さん» 決めしちゃんありがとう!(;;)私はここではお話投稿しなくなるけど、相変わらず決めしちゃんのファンだし、これからも決めしちゃんのお話を読者として楽しみにしてるね^^才能に溢れた決めしちゃんが大好きでした!ビッグラヴ!!!! (2021年3月27日 19時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - 短い間だったけれど、仲良くしてくれてありがとう……!もみじちゃんと出会えてよかったです!!連投ごめん!!!!ビッグラヴ!!!!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - もみじちゃん……!!コメントが遅れて申し訳ない( ; ; )完結おめでとう!!!恋愛に鈍くて初心な不死川さんらしさが溢れた素敵な作品でした……!!もみじちゃんが占ツク卒業しちゃうの死ぬほど寂しいけど、ずっと応援してるからね!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 蓮さん» 蓮ちゃんありがとうっ!もう蓮ちゃんに言いたいのは……ただただ大好き!!!!それだけ!!!!これからは蓮ファンクラブ代表として読み手にまわるね^^本当にありがとな!!! (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 古猫丸さん» わっ…まさか古猫丸様からコメントをいただけると思っておらず震えておりますっ。私には勿体ないお褒めのお言葉…本当に嬉しいです。ありがとうございます(;;)私、古猫丸様の書く煉獄さんがすっごく大好きなのでこれからも読みにいかせていただきますね^^ (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もみじ | 作成日時:2021年3月1日 19時