色恋に興味がない男の話【不死川実弥】

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来たる金曜日。
隣にいるのは言わずもがな不死川さんで、会って早々に先日お貸した傘と浴衣を返された。



「この間は助かったァ」

「いえ」

「今日は何も食わねぇの？」

「まぁ…」

「………」

「………」

「オイなんだよ…変だぞ今日」

「………怒ってますから、私」



甘味も注文せず、時たまお茶だけ啜って、口をムッと一文字に結んでいる私。一方の不死川さんさんはガシガシと頭を掻いたり、目つきの悪い物騒な横目で覗いてきたり、ハァと深くため息をついたりと忙しない。



「……俺なんかしたかァ？」

「はい。しました。されました。」



柱たるお方にこのような態度はいかがなものかと自分でも思うけれど、先日の自宅での不死川さんの言動はさすがに許容できるものではない。

思わせぶりなことを言ったり、あんなふうに……抱きしめたり。思い出すだけで体温が1〜2度上がりそうだから極力考えないようにしている。



「すまねェ。何をしたか全く思いつかない」

「………はい？」



不死川さんにとって、女性を抱きしめるという行為はなんてことのない日常茶飯事な出来事ということだろうか。
私はあの日以来、朝起きたときも夜眠る前もあの時の体温が忘れられないというのに。



「………わりィ」

「何に謝ってるんですか」

「いや分かんねェが…アンタがそんな感じだと調子狂う…」

「………」



目を泳がせながら、ガシガシと頭を掻くその困った様子が、不覚にもちょっと可愛らしいと思ってしまった。これが惚れた弱みか………。




「どうしたら機嫌直んだよ」

「……それは、自分で考えてください」



いつから私はこんなに可愛げのない言葉ばかり吐いてしまうようになったのか。でも、少し距離が縮まったような感じもして、悪くない…とすら思っている。



「じゃあ…うち来るかァ？」

「……はい？」

「夕飯振る舞うからよォ。それで手を打ってくれ…」

「不死川さん………ホンットに何も分かってないんですね！？」

「あ？」

「ご自宅には行きませんっ」



キッパリと断ると、首を垂れて分かりやすく落ち込む不死川さんを見て、なぜだか申し訳ない気持ちになってきてしまう。



「……でも、お店でなら……行きたいです」

「わァった。じゃぁそろそろ出ようか」




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