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自室に戻ってから暫く動悸が収まらなかった。不死川さんが触れた肩と手首が熱くてたまらない。
貴方は私のことを好きじゃないのに。罪滅ぼしをするという義務から解放されて清々しているはずなのに。
…どうして、あんな顔をしたんだろう。
考えても考えてもその答えはでなくって、一つ分かっているのは「不死川さんのことは諦めたほうがいい」ということ。それは、いくら馬鹿な私でも分かりきっていた。
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やっぱり初めて来た場所で眠るのは苦手だ。結局ほとんど寝つけず、しっかり眠れたのは1〜2時間だけ。
窓の外は快晴。でもそれに反して、身体が怠くて重く感じるのは寝不足のせいか、気持ちからくるものなのか…。
早いところ自宅に帰ろうと荷物を纏めて部屋を出ると……
運悪く、二つ隣の部屋から出てきた不死川さんと鉢合わせてしまった。
何があったとしても、彼は上官。無視はできないから、深く一礼をして足早に此処から去ろうとした。
「待て」
呼び止められるとは思っておらず、身体がビクンと揺れる。ゆっくり振り向くと、すぐ後ろに真剣な顔をした不死川さんがいた。
「言い逃げはねぇだろ」
「……はい?」
「昨日。」
ー罪滅ぼしなんていりません
ー私のことはもう気にしないでください
ああ、そうだ。
私は言いたいことだけ言って、返事も聞かずに不死川さんの部屋から出て行ったんだった。
偉そうなことを言ってしまったと今になって後悔して、謝らなきゃ謝らなきゃと焦る。
「俺が罪滅ぼしで毎週毎週あんなことしてたと思ってんのか?」
「…思ってます」
「なんでそんな風に思ってんのかは知らねぇけど。俺は自分があぁしたくてした。行きたいとこに行って、会いたい奴に会った」
「………」
「…勝手な解釈してんじゃねェよ」
勝手な解釈?ちがう、ちがうちがう。不死川さんがそう言っているのを私は聞いた。
そう否定しようとしても、目の前の彼の圧に押されて言葉が出てこない…。
「……ハァ。もういいわァ」
「……」
「寝不足だろ?早く帰って寝ろ」
立ち尽くす私の横を不死川さんが通り過ぎて行った。
私が初めての場所でうまく眠れないことを憶えてくれていた。その上で、寝不足だということを気にかけてくれた。
諦めなくちゃと思うのに……
その優しさがまた私の心を掴んで放してくれなかった。
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もみじ(プロフ) - 覚悟を決めし者さん» 決めしちゃんありがとう!(;;)私はここではお話投稿しなくなるけど、相変わらず決めしちゃんのファンだし、これからも決めしちゃんのお話を読者として楽しみにしてるね^^才能に溢れた決めしちゃんが大好きでした!ビッグラヴ!!!! (2021年3月27日 19時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - 短い間だったけれど、仲良くしてくれてありがとう……!もみじちゃんと出会えてよかったです!!連投ごめん!!!!ビッグラヴ!!!!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - もみじちゃん……!!コメントが遅れて申し訳ない( ; ; )完結おめでとう!!!恋愛に鈍くて初心な不死川さんらしさが溢れた素敵な作品でした……!!もみじちゃんが占ツク卒業しちゃうの死ぬほど寂しいけど、ずっと応援してるからね!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 蓮さん» 蓮ちゃんありがとうっ!もう蓮ちゃんに言いたいのは……ただただ大好き!!!!それだけ!!!!これからは蓮ファンクラブ代表として読み手にまわるね^^本当にありがとな!!! (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 古猫丸さん» わっ…まさか古猫丸様からコメントをいただけると思っておらず震えておりますっ。私には勿体ないお褒めのお言葉…本当に嬉しいです。ありがとうございます(;;)私、古猫丸様の書く煉獄さんがすっごく大好きなのでこれからも読みにいかせていただきますね^^ (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もみじ | 作成日時:2021年3月1日 19時