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任務終わりに寄った藤の花の家紋のお屋敷。縁側から見える果てしなく広い夜空には、小さな星が一つだけぽつんと寂しげに光っていた。
まるで私みたいだな、なんて思いながら、ご主人が淹れてくださったお茶を啜り、数ヶ月前の出来事に思いを巡らす。
考えてみれば、私は一度振られた身でありながら、憧れの人とあんな風に甘味処でお話ができる仲になれた、それだけで幸せなことだった。
いつからかそれ以上を望んでしまうようになった自分の強欲さに嫌気がさす。
不死川さんは今頃、どうしているのだろうか……………
彼の顔が頭に浮かんでは目頭が熱くなる、そんな毎日から抜け出したくて、彼を諦める方法ばかり考えていた。
突然、肩を強く掴まれて勢いよく振り返ると、ちょうど今頭に浮かんでいた彼の姿。
「わっ………えっ、あ……こ、こんばんは」
青筋をたてて酷く怒っているその様子にたじろぐのも束の間、強く手首を引かれて屋敷の中へと連れ戻される。
着いたのは、今日私が寝泊まりする部屋の二つ隣の一室。「殺」という刺繍の入った羽織がハンガーにかけられていた。
「あの………、」
手首は解放されたものの、私に背中を向けたまま何も喋らない不死川さん。その背中からは殺気すら感じる。
「……ごめんなさい」
咄嗟に口から出てきたのは謝罪の台詞。何に対して謝っているのかは自分でも分からない。
「……なぜ……………った?」
「えっ?」
「なぜ、来なくなった?」
聞こえてきたのは、その様子とは不釣り合いな、小さく消え入りそうな弱々しい声だった。
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もみじ(プロフ) - 覚悟を決めし者さん» 決めしちゃんありがとう!(;;)私はここではお話投稿しなくなるけど、相変わらず決めしちゃんのファンだし、これからも決めしちゃんのお話を読者として楽しみにしてるね^^才能に溢れた決めしちゃんが大好きでした!ビッグラヴ!!!! (2021年3月27日 19時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - 短い間だったけれど、仲良くしてくれてありがとう……!もみじちゃんと出会えてよかったです!!連投ごめん!!!!ビッグラヴ!!!!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - もみじちゃん……!!コメントが遅れて申し訳ない( ; ; )完結おめでとう!!!恋愛に鈍くて初心な不死川さんらしさが溢れた素敵な作品でした……!!もみじちゃんが占ツク卒業しちゃうの死ぬほど寂しいけど、ずっと応援してるからね!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 蓮さん» 蓮ちゃんありがとうっ!もう蓮ちゃんに言いたいのは……ただただ大好き!!!!それだけ!!!!これからは蓮ファンクラブ代表として読み手にまわるね^^本当にありがとな!!! (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 古猫丸さん» わっ…まさか古猫丸様からコメントをいただけると思っておらず震えておりますっ。私には勿体ないお褒めのお言葉…本当に嬉しいです。ありがとうございます(;;)私、古猫丸様の書く煉獄さんがすっごく大好きなのでこれからも読みにいかせていただきますね^^ (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もみじ | 作成日時:2021年3月1日 19時