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「お婆ちゃん、今日もごちそうさまでした」
「いいえ。二人ともいつもありがとなぁ」
「…………」
全てを理解しているかのようにニヤニヤと笑って見てくる婆さん。
「(若ぇもんは良いのぅ。お幸せになぁ?)」
なんて、彼女には聞こえない程の声で囁かれて、否定するのも違うと思った俺は「おぅ…」とよく分からない返事をしていた。
はたから見たら俺と彼女の関係はどのように映るのだろうか。そんなことをぼーっと考えながら今日も彼女を家まで送り届ける。
「いつもありがとうございます」
「ん。じゃァまた」
「あっ!ちょ、ちょっとお待ちいただいてもいいですか?」
慌てながらそう言うと彼女は走って家の中へと入っていった。1〜2分して出てきたその手には紙袋が握られている。
「昨日任務の帰りに不死川さんへのお土産を買ったんです。良ければ、貰ってください」
その袋は有名な御萩の店のもので。
いつか食べてみたいけれど並ぶ時間もないから買いに行けないと以前話した事を憶えていてくれたのだろうか。
「これ……かなり並んだろ?」
「いえ、たまたま空いてたので、へへ」
嘘だ。そんな訳はねェ。これは、朝早くから並ばないと1時間もしないうちに売り切れると有名だった。それを健気に笑いながら俺に差し出す彼女に胸が締め付けられる。
「ありがとなァ」
礼を言うと、心底嬉しそうで幸せそうな笑顔がそこに咲いた。
その瞬間……
蓋が外れたかのように温かい気持ちが胸の中を埋め尽くし、気付くと俺は、
彼女の手首を引いて、自身の腕の中に閉じ込めていた。
「…………ひっ………え……?」
後頭部と腰に回した腕に力が籠る。手加減など、俺は知らなくて、
「し、不死川さん…?」
「…………」
「あの、い、痛い………です」
痛い、そう言われてハッとし、彼女を腕の中から解放する。「わりィ」と謝ると、「謝らないでください」と真っ赤に染まった顔が下を向いた。
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もみじ(プロフ) - 覚悟を決めし者さん» 決めしちゃんありがとう!(;;)私はここではお話投稿しなくなるけど、相変わらず決めしちゃんのファンだし、これからも決めしちゃんのお話を読者として楽しみにしてるね^^才能に溢れた決めしちゃんが大好きでした!ビッグラヴ!!!! (2021年3月27日 19時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - 短い間だったけれど、仲良くしてくれてありがとう……!もみじちゃんと出会えてよかったです!!連投ごめん!!!!ビッグラヴ!!!!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - もみじちゃん……!!コメントが遅れて申し訳ない( ; ; )完結おめでとう!!!恋愛に鈍くて初心な不死川さんらしさが溢れた素敵な作品でした……!!もみじちゃんが占ツク卒業しちゃうの死ぬほど寂しいけど、ずっと応援してるからね!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 蓮さん» 蓮ちゃんありがとうっ!もう蓮ちゃんに言いたいのは……ただただ大好き!!!!それだけ!!!!これからは蓮ファンクラブ代表として読み手にまわるね^^本当にありがとな!!! (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 古猫丸さん» わっ…まさか古猫丸様からコメントをいただけると思っておらず震えておりますっ。私には勿体ないお褒めのお言葉…本当に嬉しいです。ありがとうございます(;;)私、古猫丸様の書く煉獄さんがすっごく大好きなのでこれからも読みにいかせていただきますね^^ (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もみじ | 作成日時:2021年3月1日 19時