19. ページ22
.
毎週金曜日の15時。
任務や他の用事がない限り俺たちは此処で会う。
最初の一回こそ「金曜日の15時」と口合わせをしたけれど、それ以降は特に約束をすることなく此処に来て、お互いの姿を見つけたら当たり前のように隣に座るようになっていた。
彼女が俺を呼ぶのも「不死川様」から「不死川さん」に代わって。顔が膝にくっつきそうなくらい深すぎるお辞儀をされることもなくなった。彼女も俺も、笑う回数が増えて。幾分距離が縮まった、そう思う。
.
「こんにちは、不死川さん」
「よォ」
今日は俺の方が先に着いて、後からきた彼女が隣に腰掛けた。
「あれ?珍しいですね。餡蜜ですか?」
「あァ。アンタがいっつも食べてるから気になってよ」
「言ってくだされば一口差し上げるのに…!」
「っいやそれは………遠慮するわァ…」
「……?私は御萩にしたので今日は反対ですね」
それから、冨岡が懐から取り出した潰れかけの御萩を寄越してきた話や、伊黒が甘露寺に腕相撲で惨敗した話をすると、けたけたと楽しそうに笑ってくれた。
「はぁ、本当に不死川さんのお話は面白いです」
「そうかァ?」
「はい!もう、ずっと聞いていられます」
笑わせようと思って話しているわけではないし、話が面白いなんて人生で一度も言われたことはない。
ただ何か話さなければと思って、先週あった出来事をそのまま話しているだけなのに、うんうんと一生懸命聞いてくれて、笑ってくれるのだ。
「変わった奴だなァ」
「………へっ?どこがですか?」
「全部」
「全部?!」
眉間に皺を寄せて、口をムッと結んだその顔は初めて見る表情で。俺は、吸い寄せられるように彼女の柔らかそうな頬に右手を添えた。
「………っ」
ボッと音が聞こえそうなほど一瞬にして顔を赤く染めた彼女を見て我にかえり、親指と人差し指でその頬を摘んで横に引っ張る。
「くっ。変な顔」
「……っ!やめへふははい!!!」
もう自分でも否定するのは困難な程に、心の中の小さな芽は着実に少しずつ、育っていた。
609人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もみじ(プロフ) - 覚悟を決めし者さん» 決めしちゃんありがとう!(;;)私はここではお話投稿しなくなるけど、相変わらず決めしちゃんのファンだし、これからも決めしちゃんのお話を読者として楽しみにしてるね^^才能に溢れた決めしちゃんが大好きでした!ビッグラヴ!!!! (2021年3月27日 19時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - 短い間だったけれど、仲良くしてくれてありがとう……!もみじちゃんと出会えてよかったです!!連投ごめん!!!!ビッグラヴ!!!!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - もみじちゃん……!!コメントが遅れて申し訳ない( ; ; )完結おめでとう!!!恋愛に鈍くて初心な不死川さんらしさが溢れた素敵な作品でした……!!もみじちゃんが占ツク卒業しちゃうの死ぬほど寂しいけど、ずっと応援してるからね!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 蓮さん» 蓮ちゃんありがとうっ!もう蓮ちゃんに言いたいのは……ただただ大好き!!!!それだけ!!!!これからは蓮ファンクラブ代表として読み手にまわるね^^本当にありがとな!!! (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 古猫丸さん» わっ…まさか古猫丸様からコメントをいただけると思っておらず震えておりますっ。私には勿体ないお褒めのお言葉…本当に嬉しいです。ありがとうございます(;;)私、古猫丸様の書く煉獄さんがすっごく大好きなのでこれからも読みにいかせていただきますね^^ (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もみじ | 作成日時:2021年3月1日 19時