17. ページ19
2日後の金曜日。
時刻は14時45分。
来店した俺を見て店の婆さんは「ふふふ、兄ちゃん見かけによらず可愛いねぇ」なんて笑った。
心の中で、うるせぇ…と思ったがなんせ今俺は機嫌がいいから「そりゃどーも」なんてちょっと笑って。
御萩にはまだ口を付けずテーブルに置いたまま、抹茶を少しずつ啜りながら入り口の扉と時計ばかりに目がいく。そんな俺に気付いて陳列台の内側にいる婆さんはまたふふふと笑っていた。
ーチャリン
入り口の扉に吊り下げられた鈴が鳴った。
「お邪魔しまーす」という場違いな挨拶とともに店内へ入ってきたのは紛れもなく俺が待っていた彼女で。
「いらっしゃい、今日は?」
「どうしようかなぁ。御萩……いや、やっぱり餡蜜にしようかな。あーでも先週も餡蜜だったか…。んー…やっぱり餡蜜にする!」
「ふふふ、あいよ」
「ねぇお婆ちゃん、彼は?今週来てた?」
「あっち見てごらん」
婆さんが俺の方に目をやって、彼女の首がくるりとこっちを向いた。
顔に熱が集まって、気不味くて。咄嗟に目線を外した。
「ちょ、ちょっとお婆ちゃん!早く言ってよっ…!」「ふふ、ほら隣行っておいで」「もう〜…」なんて会話が聞こえて、小さな足音がこっちに近づいた。
「あ、あの……お久しぶりです。お隣、いいですか…?」
顔を上げると、久しぶりに見る彼女の姿がすぐそこにあって心臓がドクンと跳ねた。俺も相当だと思うが彼女の方がきっと顔が赤い。
「おぉ…久しぶりィ」
どうぞの意を込めて隣をトントンと叩くと「失礼します」なんてかしこまりながら俺の横に腰掛けた。
「随分、婆さんと仲良くなったんだな」
「実はあれから何度か通っていまして……へへ」
幸せそうな表情で餡蜜を口に含んだあと「ここの甘味とっても美味しいので」なんて言う彼女に、本当にそれが理由かよ、と自惚れたつっこみが浮かぶ。
「……というのは建前で…いや美味しいのは本当なんですけどね?不死川様がいらっしゃればいいな、と思って…通っていたんです」
「…………」
湯呑みを持った手が止まる。
隣の彼女をちらっと盗み見るとちょうど同じようにこっちを見たその真っ直ぐな視線と重なった。
「ご、ごめんなさい……久しぶりにお会いできたのが嬉しくて…つい思ってることを…」
「俺も、」
「………え?」
キョトン、としたその表情から目を逸らさずに。
「俺も、アンタに会えるかなと思って、きた」
609人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もみじ(プロフ) - 覚悟を決めし者さん» 決めしちゃんありがとう!(;;)私はここではお話投稿しなくなるけど、相変わらず決めしちゃんのファンだし、これからも決めしちゃんのお話を読者として楽しみにしてるね^^才能に溢れた決めしちゃんが大好きでした!ビッグラヴ!!!! (2021年3月27日 19時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - 短い間だったけれど、仲良くしてくれてありがとう……!もみじちゃんと出会えてよかったです!!連投ごめん!!!!ビッグラヴ!!!!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - もみじちゃん……!!コメントが遅れて申し訳ない( ; ; )完結おめでとう!!!恋愛に鈍くて初心な不死川さんらしさが溢れた素敵な作品でした……!!もみじちゃんが占ツク卒業しちゃうの死ぬほど寂しいけど、ずっと応援してるからね!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 蓮さん» 蓮ちゃんありがとうっ!もう蓮ちゃんに言いたいのは……ただただ大好き!!!!それだけ!!!!これからは蓮ファンクラブ代表として読み手にまわるね^^本当にありがとな!!! (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 古猫丸さん» わっ…まさか古猫丸様からコメントをいただけると思っておらず震えておりますっ。私には勿体ないお褒めのお言葉…本当に嬉しいです。ありがとうございます(;;)私、古猫丸様の書く煉獄さんがすっごく大好きなのでこれからも読みにいかせていただきますね^^ (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もみじ | 作成日時:2021年3月1日 19時