未来への手向け ページ7
相変わらずガチガチの春奈、まるで一昔前のロボットか何かみたいだ。油でもさせば調子良くなるんじゃないか、なんて馬鹿らしい方法が浮かぶ。
引きつっているんだか混乱しているんだか、皆目見当もつかない表情。それも当然か、義理とはいえ兄の方の父親と対面している訳だし。
まぁ春奈は気付いてないだろうけど、鬼道のお父さんだってそれなりに緊張感は持っているらしい。
いつもの堂々さと言うか、無意識に撒き散らしているだろう威厳のようなものが薄れているように感じたのである。
考えてみるとこの二人って複雑な関係だよなぁなんて思いつつ、落ちてきた横髪を耳にかけた。実を言うと邪魔なのである。
何処かに引っ掛かりにくいのは良いけど安定しないのは困りものだ。とはいえ結ぶのも落ち着かないし、結局そのままにしておくしか無いのだけど。
お団子にしようにも面倒臭いし、通常通りが一番良いのだ。
あっでもそろそろ髪伸びてきたな、今度切ろうかな〜、そんな呆れる程に気の抜けた思考をループさせる。今ちょっと暇だから。
後輩が困ってるっぽいのは知ってるけど、こういう時に助け船を出してあげるだけが先輩じゃない。困難も修行と経験の内、多分そういう事。
すると、春奈の混乱を察したらしい鬼道のお父さんがこちらへ向き直る。ようやく話が終わったかな、と思っていれば__
「今晩の夕食は三人で食べるといい。私が水を差してしまうのは避けたい、それに有人も喜ぶだろう……どうか楽しんでくれ」
低い低いバリトンがそれを告げ終わらないうちに、鬼道のお父さんは颯爽と歩き出す。その後ろ姿には、何か暖かいものが浮かんでいる気がした………
同時に、諦めと受容らしきものも。単なる推測でしかないけれど、恐らく大半の感情は当たってるはず。
もしかして私のお父様に何か聞いたのか、それとも自分で“現実になりうる最悪の未来”を危惧してくれたのか。そればっかりは分からない。
まぁそんなのは未来じゃなく、確実にやってくる事実だ。避けられないし避ける気もない、抗うつもりも毛頭ない。
だって___
そんな思考をかき消して、少し遠くになった鬼道さんの背中に声を投げ掛ける。
『ありがとう御座います。お言葉に甘えて』
彼はこくりと頷くだけで、振り返りすらしなかった。流石は鬼道グループの頂点、この状況に対する最適解だ。
私の口、その端がゆるりと弧を描く。
とってもとっても、
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アインツバル - 橋本アリィちゃんさん» ですが既に手放しかけていた粗末な文へ、こうして温かい言葉を掛けて下さった事 心から感謝しています。末筆ですが改めて、読んで頂きありがとうございました! (2022年2月26日 14時) (レス) id: 21e5f63abe (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 橋本アリィちゃんさん» コメント有り難う御座います、反応が大変遅くなってしまい申し訳ございません。前の作品については仰る通りで、私自身の手で消去致しました。応援して頂いたところ本当に心苦しいのですが、恐らく今後これを更新する事はありません。 (2022年2月26日 14時) (レス) id: 21e5f63abe (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても楽しく読ませて頂きました!今後とも応援しています!頑張って下さい!(*´ω`*)(((後、前の作品が全て消えてるんですが、気のせいですかね?(´・ω・`)))) (2021年11月6日 10時) (レス) id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 月花さん» はい3コメおめでとありがと大好き…!!()そうそう弱気な吉良ヒ、(幼少期だもの←) コメントはいつだって超絶嬉しいよ…!!本当にありがとう、これからも宜しく! (2020年8月2日 22時) (レス) id: cbb6f528ce (このIDを非表示/違反報告)
月花(プロフ) - 今更感あるけど….シリーズ五本目!おめでとう〜!三コメをいただいていきま〜す(←) ヒロトの名前が出てきたとき、「えっヒロ…吉良ヒ…?…!?」でした、あるちゃんの小説大好きです、更新…無理なく頑張って下さい!!(以上、謎タイミングコメント野郎でした!←) (2020年7月30日 21時) (レス) id: 689878ceda (このIDを非表示/違反報告)
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