【回想】鈍く密かに 緩やかに ページ29
音はしなかった＿＿否、私に聞こえなかっただけかもしれない。そうなるのも自然な事なんじゃないか、と思うくらいには驚いていた。
ただ視界を裂く銀色を振り払っただけで、特筆すべき事など何一つない筈なのに。どうしてだか、己の喉はやけに落ち着いた呼吸でしか震えない。
今すぐ叫び出したって何ら可笑しくはなく、寧ろ通常ならすべからく恐怖を抱くだろう状況。それは理解していると言って間違いない。
けれど、そうなのだけれども、私は他人事のように呆然としていた。大して鮮烈でもない痛みは、中々どうして普段から享受しているものに劣っている気がしたのだ。
まるで外界へ姿を見せるのを渋っているかのような＿＿実際は私のアドレナリンやらがそう見せたのだろうが＿＿それが地を這う蛇の如く肌を伝い、潔癖さを主張する床へ模様をつけていく。
周囲の目が私という存在、それが奇妙で異端的で不似合いであると言うように注がれる。そんな困惑が場を強ばらせる中、ひとつだけ違うものが身体にぶつかった。
その少年は、吉良ヒロトは困惑するでも あからさまに驚愕するでもなく、ただ純粋な恐怖を目尻から溢す。崩れたように落とされた腰、その横で小さな掌が震えていた。
まるでその涙が合図だとでも言うのか、甲高い悲鳴や怒号と我が父親を呼ぶ声が羽虫となって飛び交う。そして私は酷く緩慢に、自分の有り様を理解する。
私が即座に動かなければ、あれは尻餅をついて泣き出した彼を餌食としていたのだという事。
私の腕から滴るのは、煌びやかさにおよそ見合わない鮮血だという事を。
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アインツバル - 橋本アリィちゃんさん» ですが既に手放しかけていた粗末な文へ、こうして温かい言葉を掛けて下さった事 心から感謝しています。末筆ですが改めて、読んで頂きありがとうございました！ (2022年2月26日 14時) (
レス) id: 21e5f63abe (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 橋本アリィちゃんさん» コメント有り難う御座います、反応が大変遅くなってしまい申し訳ございません。前の作品については仰る通りで、私自身の手で消去致しました。応援して頂いたところ本当に心苦しいのですが、恐らく今後これを更新する事はありません。 (2022年2月26日 14時) (レス) id: 21e5f63abe (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します！とても楽しく読ませて頂きました！今後とも応援しています！頑張って下さい！(*´ω｀*)(((後、前の作品が全て消えてるんですが、気のせいですかね？(´・ω・｀)))) (2021年11月6日 10時) (レス) id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 月花さん» はい3コメおめでとありがと大好き…!!()そうそう弱気な吉良ヒ､(幼少期だもの←) コメントはいつだって超絶嬉しいよ…!!本当にありがとう、これからも宜しく！ (2020年8月2日 22時) (レス) id: cbb6f528ce (このIDを非表示/違反報告)
月花(プロフ) - 今更感あるけど….シリーズ五本目！おめでとう〜！三コメをいただいていきま〜す(←) ヒロトの名前が出てきたとき、「えっヒロ…吉良ヒ…？…！？」でした、あるちゃんの小説大好きです、更新…無理なく頑張って下さい！！(以上、謎タイミングコメント野郎でした！←) (2020年7月30日 21時) (レス) id: 689878ceda (このIDを非表示/違反報告)
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