王帝の姫は幸福を知らない。5【イナアレ】

嘘吐きの我が儘 ページ3

『はい、簡潔にね。私は少しの間ここに厄介になる、けど女子一人だと寂しいんで春奈を呼んで今に至る………以上』


ぴ、と人差し指を立てて説明した。これなら絶対に分かってくれると思う、目安として円堂が分かる言葉を使ったし。


「……成る程な。感謝をすべきか蔑視するべきか………」


『やめて蔑視しないでヘコむ』


人が懇切丁寧に説明してやったというのに、何故こっちが蔑視されにゃならんのだ。全くもって意味不明である。


やっぱりコイツは意地悪だ、根は優しいと仮定しても結構酷い言い様だもの。でも前はもっと悪者〜な感じだったし、改善されたと喜んでおいた方が良いのだろうか。


でもあの頃の鬼道は“クズ”しか言ってないイメージ強かったし、っていうか『クズ(ってよく言う人)といえば』的な風潮もあった。誤解を招きすぎる表現だが。


懐かしい思い出に浸っていると、何やら熟考していた鬼道がゴーグルの奥を輝かせる。はて、何か良い事でもあったのだろうか。


「つまり、A。言い方を変えればお前の我が儘である、という事か？」


キョトンとしながら此方を真っ直ぐに見る彼、その後ろで笑いを堪えてる春奈………誰かこの兄妹どうにかしてくれ。


しかも当人たちに悪気が無いから困り物なのだ、悪意のない行動ほど心を切り刻んだりするのである。道徳の授業の講師にでもなってやろうか。


まぁ嘘吐きが講師になっても説得力皆無だよな、なんて思いつつ溜め息をついて悪戯っぽく笑った。


『ご名答。当然だよ、我が儘を言うのは何時だって私なんだから。そうだろ？』


男の子みたいな口調と共にと笑えば、鬼道からは嘆息、春奈からは謎の拍手が返ってくる……いや、何嘆いてんだ。あと何に感銘を受けてるの。


この二人の反応ってたまにやり辛いんだよなぁ、どうせならツッコミの一つくらい入れて頂きたい。例えば土門とか半田のように。


そういや星章にもボケ担当は居るんだろうか、なんて思考を巡らせていると＿＿＿何やら奇妙な音が響く。文字にするなら『きゅるるるる』、だ。


アラームとかの音ではないだろうし、もちろん楽器の類いでもないだろう。しかも至近距離で聞こえた、この点から候補は大分絞れる。


今の時刻は午後6時55分、夕刻だ。この時間帯で『きゅるる』、そして三人の表情から推測するに＿＿＿


あっ。春奈のお腹空いたサインだわこれ。これは年頃の女子的に恥ずかしいだろうな……よし、誤魔化したげよう。嘘のプロとして。


『あ、ごめんお腹鳴っちゃった。鬼道、クッキーフレーバーとか持ってる？』

ツギハギ王子の善意→←言うなればフラグ重工。

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