【回想】“どうにも子供らしからぬ” ページ18
……今更ながら疑問が浮上した。その吉良ヒロトがこちらを見ているからといって、わざわざ鬼道が気にかける程の重要性が見当たらない。
吉良ヒロトだってたかが子供なのだから、同年代の人間を眺めていても不思議ではないはず。それに私、及び鬼道は立場的にも注目される括りに属する。
何ならさっきまでは大人たちの視線が鬱陶しいくらいだったし、鬼道も見られるくらいで心が動くほど柔な人間ではないと思うのだけれど。
私がそんな思考に集中していると、鬼道がひとつ嘆息したように溜め息をつく。まるでこちらを密かに哀れんでいるかの如く、その表情には僅かながら呆れが透けて見えた。
「……この会場に
招待された、の部分にアクセントを置いた声色。恐らくそれは子供や秘書などを除外した、有権者を指しているのではないだろうか? そんな推測が確信に変わる。
『当然。要約すれば“敵情視察とパイプ作り”、でしょ』
ひとつの意思の元に蠢く動物、そんなようにも見える人の群れから目を逸らさずにそう返す。今もあちこちで今後をかけた心理戦の名を冠した探り合いがされている、と思うと嫌悪感が湧いた。
「その通りだ。やるな」
そんな私の心持ちも知らず、期待通りの回答をお気に召したらしい相手はやけに満足げだ。少し腹が立つな、と感じたのはもちろん秘密である。
と言うか、今は吉良ヒロトの話をしているというのに何故大人の話をしているのだろう。断じて認めたくはないが、悔しながら全くもって理解できない。
すると彼はその視線を宙に放り__恐らくは子ウサギのように隠れてしまった吉良ヒロトに向けて__当然とでも言いたげな口調で語る。
「俺達は敵情視察なんてする必要はないが、後者は別だ。今の内に幼馴染みもしくは知り合いというアドバンテージを作り出しておけば、少なくとも損をする事はないだろう」
こんなマセた、あるいは計算高くて生意気な事を言っても彼は眉すら動かさない。自分の言動に相応の自信、もしくは確信に似た何かを持っている証拠だ。
『……子供にしては随分と打算的だけど。これも乗り掛かった船、って事にしておく?』
「そうだな。俺1人では不信感が芽生える可能性も否めん」
『了解。そういうの得意だから』
かくして、私達は格好の獲物…………ではなく、“寂しそうな男の子”の元へと肩を並べて進んだのだった。
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アインツバル - 橋本アリィちゃんさん» ですが既に手放しかけていた粗末な文へ、こうして温かい言葉を掛けて下さった事 心から感謝しています。末筆ですが改めて、読んで頂きありがとうございました! (2022年2月26日 14時) (レス) id: 21e5f63abe (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 橋本アリィちゃんさん» コメント有り難う御座います、反応が大変遅くなってしまい申し訳ございません。前の作品については仰る通りで、私自身の手で消去致しました。応援して頂いたところ本当に心苦しいのですが、恐らく今後これを更新する事はありません。 (2022年2月26日 14時) (レス) id: 21e5f63abe (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても楽しく読ませて頂きました!今後とも応援しています!頑張って下さい!(*´ω`*)(((後、前の作品が全て消えてるんですが、気のせいですかね?(´・ω・`)))) (2021年11月6日 10時) (レス) id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 月花さん» はい3コメおめでとありがと大好き…!!()そうそう弱気な吉良ヒ、(幼少期だもの←) コメントはいつだって超絶嬉しいよ…!!本当にありがとう、これからも宜しく! (2020年8月2日 22時) (レス) id: cbb6f528ce (このIDを非表示/違反報告)
月花(プロフ) - 今更感あるけど….シリーズ五本目!おめでとう〜!三コメをいただいていきま〜す(←) ヒロトの名前が出てきたとき、「えっヒロ…吉良ヒ…?…!?」でした、あるちゃんの小説大好きです、更新…無理なく頑張って下さい!!(以上、謎タイミングコメント野郎でした!←) (2020年7月30日 21時) (レス) id: 689878ceda (このIDを非表示/違反報告)
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