微かな傷と、その訳と。 ページ13
その質問が何を欲しがっているのか
何を言うのが正解なのか、そんな自問自答への最適解を速やかに導き出すために。
あんまり長く黙っているのも不自然だと思うから、若干の面倒くささを堪えて口を開く。
可愛い後輩は極力困らせたくないし、そんなに怯えるほど恐怖に富んだ話でもない。
それに誤魔化しが必要な程聞かれたくない話でもないし、たまには嘘を吐かないでみるのも一興だろう。
『あぁ、それか。鬼道ならよく知ってると思うけど?』
ニヤリと口の右端を歪め、軽く首をかしげながら言ってみた。質問そのものにはこれっぽっちも答えを返していないけれど、決して嘘は言っていない。
私の言葉にまた目を瞬いて、少しの間沈黙する春奈。先程の私を真似するように顔を伏せて急にこちらを向き、
「よく知ってる、って……その傷まさかお兄ちゃんがっ!?」
『ごめんね普通に違う』
なんとも見当違いな方向の言葉だったので、即座に否定する。仮にも旧友の1人に汚名を着せたくはないのだ。
そもそも万が一鬼道にやられたとしたら、こんな風にお泊まりしに来る筈がないだろうに。安易な思い込みというのは、やはり視界を曇らせて真実を隠すらしい。
いつもは周りに誤解させるように仕向けている私だが、流石にこんな不利益しか生まない誤解は好かないのである。というか無くさないと面倒臭い。
……はた、と。春奈は、まるでバッテリー切れのアンドロイドのように動きを止めた。妙な例えなのは自覚しているが、うちに居る機体もよくこんな感じになる。
心ここにあらず、というのはこういう事なのだろうか。いざ見てみると意外に面白いものだ、なんて思う。
飛沫や動きから生まれた波紋がようやく収まってきて、水面が落ち着きを取り戻した頃に、
「な、なんだ〜……背筋が凍りそうになりましたよ」
大袈裟に震えるジェスチャーをしつつ、やっと心を取り戻した様子で力の抜けた笑みが溢れた。そして矢継ぎ早に、彼女はこんな質問を声にする。
「……って事は、“お兄ちゃんが何らかの形で関係してる”傷なんですか?」
それに私は笑みで返して、高い高い天井を仰いだ。まるで、そのずっと向こうにある宇宙に思いを
『長い話になるけどね。聞きたい?』
彼女が首を縦に振るのを待ってから、私はゆっくりと語りだした。
そう、あれは確か___
【回想】ずっと昔の初めまして→←未来永劫、その痕は消えない。
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アインツバル - 橋本アリィちゃんさん» ですが既に手放しかけていた粗末な文へ、こうして温かい言葉を掛けて下さった事 心から感謝しています。末筆ですが改めて、読んで頂きありがとうございました! (2022年2月26日 14時) (レス) id: 21e5f63abe (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 橋本アリィちゃんさん» コメント有り難う御座います、反応が大変遅くなってしまい申し訳ございません。前の作品については仰る通りで、私自身の手で消去致しました。応援して頂いたところ本当に心苦しいのですが、恐らく今後これを更新する事はありません。 (2022年2月26日 14時) (レス) id: 21e5f63abe (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても楽しく読ませて頂きました!今後とも応援しています!頑張って下さい!(*´ω`*)(((後、前の作品が全て消えてるんですが、気のせいですかね?(´・ω・`)))) (2021年11月6日 10時) (レス) id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - 月花さん» はい3コメおめでとありがと大好き…!!()そうそう弱気な吉良ヒ、(幼少期だもの←) コメントはいつだって超絶嬉しいよ…!!本当にありがとう、これからも宜しく! (2020年8月2日 22時) (レス) id: cbb6f528ce (このIDを非表示/違反報告)
月花(プロフ) - 今更感あるけど….シリーズ五本目!おめでとう〜!三コメをいただいていきま〜す(←) ヒロトの名前が出てきたとき、「えっヒロ…吉良ヒ…?…!?」でした、あるちゃんの小説大好きです、更新…無理なく頑張って下さい!!(以上、謎タイミングコメント野郎でした!←) (2020年7月30日 21時) (レス) id: 689878ceda (このIDを非表示/違反報告)
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