10 ページ6
･
昔…と言っても今世じゃない。前世の話だ。
兄が骨折かなんかで入院をした時、1人で病院に行こうとしたことがある。
勿論道は知らないし、一日中迷った。
夜中まで歩き続けたせいで、足は痛くて動けないし、ここがどこかもわからない。もしかしたら一生帰れないかも、と思っていた時汗だくの家族に見つけてもらえた。
もう少しで捜索願まで出そうとしてた家族は仕事や学校放って私を探しに来てくれた。入院中の兄ですらも私を探しに来ようとしたらしい。
勿論最初はすごく怒られた。ゲンコツも食らった。
だけど最後に泣きながらギューッと抱きしめてくれたんだ。
よかった、無事で
お見舞いにいこうとしたんだね、
でもこんなこと、もうしたらあかんよ
って泣きながら言う母に、ただただごめんなさいと泣きながら抱き締め返したことを思い出した。
優しくて、懐かしい匂い…
安室さんの背中からもそんな匂いがした。
ここまで近づくと、香水よりも彼自身の匂いが鼻腔
をくすぐる。
こんなにもあったかくて、大きな背中は初めてだった。
「大丈夫、大丈夫ですから…
いっぱい、泣いてください」
そう何度も私に言い聞かせるように
その繰り返しが心地よくて、段々としゃくりあげていたのが落ち着いてきた。
「大丈夫、Aさんの周りには、優しい人が沢山います。蘭さんや、園子さん、コナンくん…他にもいっぱい、いるんですよ」
優しい声…
「寂しかったら、寂しいって言うんです。絶対に誰かが一緒にいてくれますから」
こんな言葉…
きっと私は言われるのをずっと待っていたんだろう。
友達なんて、必要ない。
そう言われ続けてきたこの世界の私は、どれだけの悲しみを胸に抱えてきたのか…
もう向こうの家族や友達には、会えないんだ。
「うぅ゛…」
また込み上げてくる何かのせいで涙が出てくる。
安室さんは優しく、背中をさすってくれた。
「あなたは、1人じゃない。
少なくとも…“俺”がいる」
…ああ、安室さん。
そんなこと言われたら
「ううぅ…ごわがっだぁあああ゛」
辛うじて繋がってた緊張の糸が、プツンって切れちゃうじゃないですか…
「ほんとですよ、もう…二度とあんなことしないでください」
「ごめんなさい…それと、ありがとう。」
「いいんですよ。こうしてAさんとハグできましたし」
「…やっぱり離して」
「ん？なんでですか？」
「わ、ちょ強！！離し…ゴリラか！！！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2488人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
理那(プロフ) - あぁ！そういうことでしたか！私よく絵を描くので知ってて！実際あんま覚えてなかったのでよかったです！ (2020年5月22日 0時) (
レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴみ(プロフ) - 理那さん» ご指摘ありがとうございます！！すみません、自分単行本派なので赤井さんの目の色すっかり勘違いしてました(号泣)訂正したのでまたよろしくお願いします！ (2020年5月21日 23時) (レス) id: bf70a421f2 (このIDを非表示/違反報告)
理那(プロフ) - 赤井さんって目は黒じゃなくて緑色、だった気がする？いやすみません間違ってたら！無理のない程度に頑張って下さい！ (2020年5月21日 21時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
イアデビル(プロフ) - めっちゃ好きです！更新頑張ってください！応援してます！ (2020年5月6日 3時) (レス) id: ef5404f845 (このIDを非表示/違反報告)
腐夢(プロフ) - 初めまして！番外編も本編もとても面白くてにやけながら読みました！読みやすいし感情移入しやすいのでとても読んでいて楽しかったです。素敵な作品をありがとうございます┏○))ﾍﾟｺﾘ (2020年4月29日 23時) (レス) id: 93d427ce7f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ピピミ | 作成日時：2018年7月6日 14時
