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「…1分だけでいいので、抱きしめてもいいですか?」



決死の思いでいったそれは、あまりに緊張しすぎて声が小さくなってしまった。

目を真ん丸にするAさんはフリーズして、そんなのでいいの?と聞く。

それがいいんです。
寧ろこんな手を使うなんて僕はなんて卑怯なんだ。

もし拒否されたらどうしよう
まだ彼女が僕を怖がっていたらどうしよう

気づいたら手が少し震えていた。



Aさんは少し考えるようにして、そして


「は、ハグでしょ?い、いいですよ?
さぁ、来てください!!」


ばーんと腕を広げ来いよとアピールしてきた。

その顔は、表現するとしたら熟れた林檎そのもので…






ああ、まじか。





「…いいんですか」

「ハグでしょ?減るもんじゃあるまいし!!はっはっ…」


Aさんの笑い声を遮って、背中に手を回した。
身長差で、少し前かがみになりながら、Aさんの肩に顔をうずめると身体が強ばったのが分かった。


「すみません…」

「…ぉ、お、おぉ、ぜ、全然!?
だ、大丈夫…デス」



ドクドクと脈打つ音が額から伝わってくる。
緊張してる…Aさんも、僕も。


微かに香る洗剤と、彼女のシャンプーの香りに大人気なく反応してしまう僕は男子高校生か。



でもここに…僕の、腕の中に…Aさんがいる。


しばらくして、僕の背中にAさんが手を伸ばすのが感じられた。

少し遠慮がちに、でもしっかりと抱き締め返してくれて、泣きそうになってしまった。



こんなに小さいのに、海のように深い安心感で溺れそうだ。








「…Aさん」




「はい」


くぐもったAさんの声





「今日、楽しかったです
また一緒に行きましょう」

「はい」









「また…こういうことしてもいいですか」






「…はい」






…ああ、だめだ。
もう溺れてる。




それでも、彼女の優しさに息が出来なくなってもいい。

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理那(プロフ) - あぁ!そういうことでしたか!私よく絵を描くので知ってて!実際あんま覚えてなかったのでよかったです! (2020年5月22日 0時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴみ(プロフ) - 理那さん» ご指摘ありがとうございます!!すみません、自分単行本派なので赤井さんの目の色すっかり勘違いしてました(号泣)訂正したのでまたよろしくお願いします! (2020年5月21日 23時) (レス) id: bf70a421f2 (このIDを非表示/違反報告)
理那(プロフ) - 赤井さんって目は黒じゃなくて緑色、だった気がする?いやすみません間違ってたら!無理のない程度に頑張って下さい! (2020年5月21日 21時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
イアデビル(プロフ) - めっちゃ好きです!更新頑張ってください!応援してます! (2020年5月6日 3時) (レス) id: ef5404f845 (このIDを非表示/違反報告)
腐夢(プロフ) - 初めまして!番外編も本編もとても面白くてにやけながら読みました!読みやすいし感情移入しやすいのでとても読んでいて楽しかったです。素敵な作品をありがとうございます┏○))ペコリ (2020年4月29日 23時) (レス) id: 93d427ce7f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピミ | 作成日時:2018年7月6日 14時

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