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目をつぶっていた。
目をつぶったまま、次にくる衝撃を待っていた。

だけどそれはいつまで経っても来なくて、恐る恐る目を開ける。




目の前にはナイフ…ではなく、









「こんな物を女性に振るうなんて、正気を疑いますね」




なんで…?
だって、来ないはずじゃ…




「…お怪我はありませんか、Aさん」

「あ、安室、さん…?」


安室さんの手元を見ると、ナイフを持っていたはずの手をがっちり止めていて、遥か彼方にナイフが転がっていた。

佐戸が呻き声をあげている。
そしてそのまま、安室さんは腕をひっぱり、足をかけて綺麗な投げ技を繰り広げた。

ぽかんとする周り、もちろん私も。
だけど次第に拍手で包まれて、伸びた佐戸を手際よく拘束した安室さんは一礼をした。




…意味がわからない。

ただ、段々と生きているという実感が今更じわじわと湧いてきて、カクン、と腰の力が抜けた。


「おっ、と。大丈夫ですか」


それすらも倒れさせまいと腰に手を添えて支えた安室さん。

香水の匂い…
いつものコーヒーの匂いがする安室さんじゃない。




「無茶なことをしますね。肝が冷えましたよ」

「なんで、嘘ついたんですか…?」


必死に絞り出して出した声は蚊が鳴く程度だった。

その後すぐにパトカーのサイレンの音にかき消されてもしかしたら聞こえてなかったのかもしれない。

だけど安室さんは私の腕をつかむと、会場の裏口から廊下に出た。

そこにあった椅子に座らされると、



「ちょっとだけ、待っていてください」



目線を合わせるようにしゃがみこむ安室さん。
それに、ただ頷くことしか出来なかった。

安室さんは優しく微笑むと頭をぽんぽんと撫でて、また会場へと戻って行った。





…暖かかった。
引っ張ってくれる手が、とても…



涙が出そうになった。

7→←第3章 おかえり 5



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理那(プロフ) - あぁ!そういうことでしたか!私よく絵を描くので知ってて!実際あんま覚えてなかったのでよかったです! (2020年5月22日 0時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴみ(プロフ) - 理那さん» ご指摘ありがとうございます!!すみません、自分単行本派なので赤井さんの目の色すっかり勘違いしてました(号泣)訂正したのでまたよろしくお願いします! (2020年5月21日 23時) (レス) id: bf70a421f2 (このIDを非表示/違反報告)
理那(プロフ) - 赤井さんって目は黒じゃなくて緑色、だった気がする?いやすみません間違ってたら!無理のない程度に頑張って下さい! (2020年5月21日 21時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
イアデビル(プロフ) - めっちゃ好きです!更新頑張ってください!応援してます! (2020年5月6日 3時) (レス) id: ef5404f845 (このIDを非表示/違反報告)
腐夢(プロフ) - 初めまして!番外編も本編もとても面白くてにやけながら読みました!読みやすいし感情移入しやすいのでとても読んでいて楽しかったです。素敵な作品をありがとうございます┏○))ペコリ (2020年4月29日 23時) (レス) id: 93d427ce7f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピミ | 作成日時:2018年7月6日 14時

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