60 F ページ10
生理的欲を吐き出して、紙で受け止めて。
トイレに流しては、戸棚の消臭スプレーを忘れずに、狭い個室内に振った。
香るシャボンに安心して、確かめた後、トイレを出た。
再び、寝室のドアを開けると、もっこりと膨らんだままのベッド。
北山がしっかりと眠ってるのを目視して、気持ちを落ち着かせるために、ベランダに出ることにした。
火照る体を夜風に当たりたい。
リビングへと戻り、レースのカーテンのみ閉じている比較的大きな窓の鍵を開けた。
この階数ならば、下からは見えないから、カーテンを閉めるのは忘れがちになる。
身を持って分かるのだが、北山の部屋だと思うと心配になる。
やはり防犯のために閉めてほしい。
そうしたことも部屋に上がらなかったら、知ることのなかった事実だった。
外に出れば、中とは違いひんやりと空気も冷たい。
気温も低いから当然だ。
暗い夜空の下には、白い吐息が目立つ。
ベランダに凭れて、電子タバコを取り出した。今や普通の煙草はベランダでさえ吸えない御時世だ。
愛煙家には、厳しい世の中だが、移り変わる時代に追いついていかなければ、すぐにバッシングされる。
そうした敏感な世界を選んだのは、自分だった。
どんな仕事も同じだろうが、この世界は突出して好感度、信頼性が要となる。
信頼や好感の失墜は一瞬で、それが回復することはほぼほぼない。
イメージが付き纏うからだ。
広い世界だと思われがちだが、世界はほんの一握り、極度に狭いと思っている。
でも、ここで生きると決めたのは自分だ。
だから、こんなにも良い暮らしをさせていただいている。
北山が背中を押してくれたから、今の自分がある。
この世界に入っていなかったら、普通に結婚してたんだろうな、って思う。
願望がないと断言出来るわけではないが、俺はもう一度人生を初めから歩めるのだとしても、またこの道を選択すると思う。
普通に結婚してたら、北山との距離は開く一方だと分かるから。
決して、贅沢をしたいとかそんなのではなく。
北山をそばに置いておきたいから。
今夜、それを確信した。
そろそろ冷えたし戻ろうかと窓ガラスに手を伸ばした時、隣でガラガラと窓ガラスが滑る音がした。
ここは、マンション。
ベランダは、薄い板のみで仕切られていた。
相手の顔は見えない。
しかし、ここは角部屋。反対側は、何もない。
途端に聞こえた声。
「ミツさん?」
たったそれだけで、嫉妬してしまう。
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みかん(プロフ) - ふっと読み返したくなるときがあり、お邪魔させていただきました。大すきな作品を残していてくれてありがとうございます。 (10月31日 0時) (レス) @page11 id: 48c1fbe080 (このIDを非表示/違反報告)
祐佳(プロフ) - ももはさんの作品が本当に大好きで、全ての作品を何回も何回も読み返しています。本当に素敵な作品を沢山ありがとうございます。何年先でもいいので、また少しでも、1ページの短編でも書こうかなという気持ちになられたら、いつでも戻ってきてくださいね( ; _ ; ) (7月24日 20時) (レス) id: 234aaa715a (このIDを非表示/違反報告)
蒼井あゆみ(プロフ) - ももは様。私も少し遠のいており、今頃読ませていただきました。今まで沢山の素敵な作品を読ませていただきありがとうございました。大好きな作品をまだまだ読み返したいと思っておりますので、ぜひ残していただきたいです。お身体お大事になさってくださいね! (7月21日 20時) (レス) id: e7dcf121d5 (このIDを非表示/違反報告)
Miel(プロフ) - ももは様。いつも素敵な作品を紡いでいただき、ありがとうございます。時々読み返しています。難しいかもしれませんが、このまま作品を残しておいていただけないでしょうか?私にとってもももは様のお話は支えでもあります。お身体には気をつけてお過ごしくださいね。 (7月1日 16時) (レス) @page11 id: e898f8c08f (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - ももはさんの作品大好きです。何回も読みたい 素敵な作品ばかりなので このまま 残していただけたら嬉しいです。 無理はなさらないで 状況が 許せるように なって また 書きたくなったら お願いします。 本当に魅力的な作品ばかりです。💕💕 (6月18日 18時) (レス) id: d4c0737fac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももは | 作成日時:2021年2月11日 13時