俺は魔王で嫁が勇者でギャグ小説ってもう意味わかんないけど楽しくやってます。【名前変換オリジナルファンタジー】

93枚目 ページ5

「おっせーよ……腹減ったー」

「すいません、すいません……もう少しだと思います！」

「主(あるじ)ー、アルー、あと弟くんに差し入……れ？何してんの二人とも」

「あああヴァルくーん！差し入れ！プリーズ！」

ヴァレンタインからビニール袋を引ったくるA。すかさず開けるも、直ぐに雄叫びが響いた。

「なんで！なんでカイロ！？食いもんよこせや！」

「いやあ、寒いかと思って」

「暖房超効いてるからね？汗かくよ？」

ちくしょー、とうなだれるA。すると、彼の真後ろの窓が一瞬煌めいた。

「A様！」

「主！」

「え？ぅぎゃあ！？」

ガラスの破裂音、衝撃音。Aは何者かに踏みつけられ、頭が床にめり込む。その隣には立派なバスタードソードが突き立てられた。周囲が固まる。

颯爽と現れたのは、朱色の髪のやや小柄な少年。翠の瞳が爛々と輝き、辺りを見回した。

少年は魔王を踏んだ状態でアルフレッドを見つけると、彼のもとへ勢いよく跳ねた。両手を広げる。

「兄上！」

「レオ……遅すぎます！」

ピトッとアルフレッドにしがみついた少年。ごめーん、と謝るものの、満面の笑みのそれはまったく罪悪感を感じていない。

ヴァレンタインが主に近づき、軽く肩を突く。

「主、生きてる？」

「なんとかなァ……！よっこらせっと」

Aは鼻血を乱暴に手の甲で拭い、その場に胡座(あぐら)。少年とアルフレッドを見上げた。

「で、アルくん。この子が？」

少年を引き剥がしたアルフレッドが、疲れた顔で頷く。少年は魔王に気づくと、一瞬驚いた顔をしてまた笑顔になった。

へらっと軽く敬礼をする。

「初めまして魔王様！僕はレオンハルト。アルフレッド兄上の弟で、貴方様の剣のご指導をしに参りました！これからよろしくお願いしまーす」

「いやもう本当……どうかこの子をよろしくお願いします、A様」

嫌な予感しかしねえ。

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