俺は魔王で嫁が勇者でギャグ小説ってもう意味わかんないけど楽しくやってます。【名前変換オリジナルファンタジー】

127枚目 ページ39

「これ以上この国に進撃するのなら、俺が許さないです！」

パリスの発言に、騒然とする室内。眉をひそめる女王たち二人に対し、ノア王は密かに口角を上げた。勇者は更に、懐から上質な紙を取り出した。先ほど扇を持つ女性をたしなめた、規律を重んじる女王が声をあげる。

「貴様、それは！」

「ふむ、のう、パリスと言ったか。そなた、勇者認定証など出してどうするつもりじゃ」

「どうもこうもないさ。俺は……」

パリスは言葉を途中で区切ると、思いっ切り紙を縦に引き裂いた。びりびり、という単調な音に、周囲は本日何度目かの驚きの吐息を零す。パリスは紙を破り終えると、その手から離した。儚げに落ちていく紙に目もくれず、まっすぐな瞳で続ける。

「俺は勇者を辞めます。真の勇者は……ノア王の妹君、リオナ様ですから」

勇者……否、元勇者パリスは、周りの雰囲気とはかけ離れた、爽やかで明るい笑みをこぼした。そこに笑い声を重ねたのは一人。老いた男のしわがれた声。

「……なんでしょうか」

「いやァ、年甲斐もなく笑ってしまったわい。坊主、なかなか面白いことをしてくれる」

老人の発言に、誰も口を挟まない。この空間の中で最も偉いからだ。後数年しか持たなそうなよぼよぼの体からは予想しにくい、どっしりとした声が空間を揺らす。

「良かろう、皆の者。この坊主の所業は儂に免じて許せ。勇者の証を自ら破るのは契約破棄で大罪だが、それよりも確かな勇気、根性というものをこの老いぼれは見出した。……この坊主、儂の国でもらい受ける。よろしいかな？」

「ノア王……」

「そうですね。貴方の御心のままに」

フィーハル王国のとある部屋。その中からは、ただ老人の楽しそうに笑う声が聞こえていた。

(こう書くと怖そうだよな……)

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