126枚目 ページ38
後日、フィーハル王国にて行われた、対ラギファルト大帝国国際会議にて。ラギファルト大帝国以外の、全世界を治める四人の長が集結する。
その前に一人立つのは、勇者パリス。フィーハル王国特有の兵士服を着こなしている。彼は神妙な面持ちで、重苦しい雰囲気の場に臨んでいた。
フィーハル王国代理、ノアが発言する。
「勇者パリス。貴殿は今回ラギファルト大帝国に潜入し、魔王に多少の傷は負わせたものの、仕留めることはできなかったか」
「はい」
ノアの隣の席で扇を仰ぎながら微笑んだ女性。艶やかな紫の髪が、椿を模した簪に束ねられている。
「のう、ノア王。これで失敗は二度目だのう。一度目は確か……そなたの妹君であったな。嫁として潜入し、魔王を仕留めるとな……今頃は懐柔されて、さぞ他国の民の屍の上に成り立つ暮らしに呆けていることぞえ」
「……」
(なんで、言い返さないんだ?)
パリスは疑問に思うが、即座に自身の中で結論が出た。
フィーハル王国は全世界の国でも、弱い立場にあるのか。だからすぐ戦場や魔王暗殺に駆り出されているのだ。
勇者は強く拳を握り、少し前へ進み出た。ほんのりひんやりとした空気を肺に入れ、目線を国王たちへ向ける。
「恐れながら、世界を統べる王たちに、言いたいことがあります……発言を許可してはいただけますか」
先ほどの女性が目を細め、扇を口元に添えてふむと促した。
「何じゃ。話すが良い」
「ありがたき幸せ。では……私は決して、魔王を仕留め損ねたのではありません」
「はははッ、何じゃ何じゃ、何が始まるかと思って聞いてみれば、ただの言い訳じゃのう!」
「__すまない、貴殿の声が少し大きく、彼の発言が聞こえなくなる。抑えてはくれないか」
別の席で聞いていた異なる国の王が、騒々しい主へと静かにそう告げた。失敬、と彼女は口を噤む。
「魔王を仕留め損ねたのではない……とすると、なんだったのだ」
「私たちが倒すべき敵は、既にいなかったのです」
パリスの発言をきっかけに、ざわめきたつ王たち。その中でノア王のみが、静かに勇者を見据えている。その後も、勇者は続けた。
「あの国の悪政は魔王……ラギファルト大帝国王によるものでなく、その宰相により行われた私腹を肥やす為のものでした。その元凶の姿は既になく、私が見たのは……全世界を幸福にしようと一生懸命な民、そして、王と妃だけでした」
「これ以上この国に進撃するのなら、俺が許さないです!!」
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モモハ(プロフ) - 健全(?)女子しょーがくせー(明日で健全(?)女子ちゅーがくせー)さん» はい!ばっちり言う経緯とかも決めてあるので、お待ちください! (2018年4月9日 20時) (レス) id: 7ea4a0fdca (このIDを非表示/違反報告)
健全(?)女子しょーがくせー(明日で健全(?)女子ちゅーがくせー) - モモハさん» リクエストお応えありがとうございました!なかなかいい感じですなぁ。さてさて名物リオナちゃんの「ど、どこ行ってたのよ!」を待ってます!よろしくです! (2018年4月9日 12時) (レス) id: 0262f2c5b7 (このIDを非表示/違反報告)
モモハ(プロフ) - 健全(?)女子しょーがくせー(卒業して、いま春休み真っ最中)さん» そうだったんですかΣ(・ω・ノ)ノ!いえいえ、描いていただけただけでも光栄です!これからもよろしくお願いしますね(*´▽`*) (2018年3月30日 13時) (レス) id: dd38aab961 (このIDを非表示/違反報告)
健全(?)女子しょーがくせー(卒業して、いま春休み真っ最中) - モモハさん» もう、そちらに画像提供ができなくなったわけです。ごめんなさい!かくといっておきながら、中途半端なことしてしまって!ごめんなさい! (2018年3月30日 10時) (レス) id: 0262f2c5b7 (このIDを非表示/違反報告)
健全(?)女子しょーがくせー(卒業して、いま春休み真っ最中) - モモハさん» すみません!どうしても、飛べない事情が分かりました!私トンでもないミスを犯していまして、私ログインしてないので、iPadでアップロードしてるんですよ。それで、諸事情によりそのアップロードした画像を消さなければならないわけでして、それで (2018年3月30日 10時) (レス) id: 0262f2c5b7 (このIDを非表示/違反報告)
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