俺は魔王で嫁が勇者でイベントあり過ぎてもう意味わかんないけど楽しくやってます。【名前変換オリジナルファンタジー】

75枚目 ページ33

「へいらっしゃい！お、そこの旦那。今日はこのリンゴがお買い得ですぜ！」

「あ、じゃあ二つ貰うよ」

「毎度！」

ラギファルト大帝国の城下町。朝一番の市場では人が賑わい、活気に満ち溢れている。

ヴァレンタインは八百屋の親父から紅いリンゴを受け取ると、一つを隣にいる主人に手渡した。シャクっと噛めば、爽やかな味わいが広がる。Aも頬張っているものの、どこかぼーっとしているようだった。ヴァレンタインが彼を覗き込む。

「主(あるじ)、どうしたの？人混みダメだった？」

「……都会って、マジやべえなあ」

ん？とヴァレンタインがAの目を見ると、彼は目を輝かせ辺りを見回す。

「おらぁこんなとこさ来たの初めてだべさ、すげえだ都会っつーんは」

「主、訛ってる訛ってる」

やべ、と語調を整えた主人公。ヴァレンタインはリンゴを食べ終えると、口の端を指で拭き取りながら口を開いた。

「……それにしても、よく魔王様が変装もせずにいて国民は気づかないよね。流石主って感じだ」

「褒めてないよねそれ⁉……そういや、カペルちゃんにもなんか買ってかねェとな」

結局カペルは、散々一緒に行きたいと言ったものの自分の仕事があるので来られなかったのだ。そっかー、と言うヴァレンタインに、きゃぴきゃぴした声がかかる。

「あ、そこのお兄さん方ぁ！ここでお花買いませんかぁ〜？」

……花、買うか。

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