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「……ほら。」
やっと見つけたのか、内容は大分前の業務連絡になっていた。日付は約半年も前。
バックの画面は、ただのプリインストールされているようなキャラクターで、俺が知ってる画面ではなかった。
「お前は……俺の知ってる藤ヶ谷じゃ、ないのか?」
自分の置かれている立場を、頭が認識していく。
こんなことってあるのだろうか。
SF過ぎるが、そうとしか思えない。
「……俺の知ってる北山、じゃないのか?」
パラレルワールド、ある時空から分岐し、それに並行して存在する別の時空を指すこと。
玉ちゃんの映画のおかげで何となく瞬時にすっと入ってくる。
見渡せば、分かる。玉ちゃんや他のメンバーの反応。
迷い込んだのは、俺の方だ。
俺は、どうしてか…俺と別れてしまった藤ヶ谷の世界へと迷い込んでしまったのだ。
藤ヶ谷がトーク画面を開いても、俺が昨夜送った藤ヶ谷へのメッセージは既読がつかない。
圏外ではないが、きっとこの電話は通じないのだろう。無言で、履歴からマネージャーに掛けてみても、コール音が鳴り、数分で留守電に切り替わる。この時間にマネージャーが出ないだなんて、有り得ない。
「……パラレルワールド、信じられないけど」
背後から、ポツリと玉ちゃんが代弁してくれた。
楽屋の空気が、一気に重くなる。
戻りたい、戻りたいよ。
「……俺が、違う時空へと来ちゃったんだよな」
その言葉をメンバーは誰も否定しなかった。
「……信じられないけど、そうみたいだな」
ポツリと目の前の藤ヶ谷が眉を寄せて答えた。ぱっと視線は逸らされる。
「帰りたい、藤ヶ谷のところに」
俺が必要としてるのは、俺の事をこんな目で見る藤ヶ谷じゃない。俺の事を拒む藤ヶ谷じゃない。
甘やかせてくれて、髪を撫でてくれる。優しく包み込むような微笑みを向けてくれる藤ヶ谷だった。
こっちの世界の俺は本当に浮気をしたのか?
本当に別に恋人が居るのか?
こんなにも、俺は藤ヶ谷が好きなのに。
藤ヶ谷しか見えないし、藤ヶ谷にしかもう身体だって熱くならない。胸だって焦がれない。
「……そっちの俺とお前は、幸せなままなのか?」
俯いてると、影が出来る。
そっと顔を上げれば、拒む藤ヶ谷の顔じゃなく、優しい藤ヶ谷の顔がそこにあった。
息を呑む。いつもの藤ヶ谷と重なる。
「……ふじがやっ、」
そっと胸に抱きついてしまった。混乱した頭は冷える事無くコントロールが出来ずにいた。
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まいまい(プロフ) - 無事に還ってこれましたね…でも別れている世界線の2人がまだ結ばれてない!!どうかどうかそっちの2人とYさんのこともよろしくお願いします!! (2021年6月9日 11時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 1632さん» 1632さんっ!いつもありがとうございます!もうすぐ他の長編が完結するので、こちらも執筆始めます…!長らく更新せず、遅くなってしまい申し訳ございません(;▽;)本当にいつもありがとうございます!感謝でいっぱいです! (2019年10月6日 11時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
1632(プロフ) - こんにちは、北山くん戻れてよかったです!もうひとつの世界の北山くんも幸せになれたかすごく気になります(><)続き楽しみにしております! (2019年10月3日 21時) (レス) id: a09880b79d (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 魚さん» 魚さまっー!わわー!今作もご覧頂き本当にありがとうございます…!嬉しすぎます(;▽;)いつもありがとうございます!はい!飛び蹴りくらっちゃう恋人のFさん、書いてて楽しかったです!更新またしたいと思いますー!違う北山くん目線、少し不安ですが〜!書きます☆ (2019年9月4日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 飛び蹴りを食らっちゃう藤ヶ谷さん可愛くて思わず笑ってしまいました!笑 元の世界の北山くんに出会えて何より嬉しいですよね〜(*^^*)! お仕事大変そうですが、お体大切にしてくださいね。゚(゚^ω^゚)゚。!更新また楽しみにしてます〜! (2019年9月2日 1時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももは | 作成日時:2019年8月15日 22時