迷走＊ワールド

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だから、逃げれないように今日は腕をもうホールドした。



「玉ちゃん、大好き！」



普段こんな事は絶対言わないが、嫉妬心を煽るために、腕を絡ませ、あざといだろーなと思いながらも玉ちゃんを上目がちにぐっと見詰めた。



「え、なに。ミツが可愛いんだけど」



あれ？いつもの玉ちゃんなら、「ガヤが面倒くさいから、そうゆの止めて」って説教してきそうなのに。想定外の反応が返ってくる。
横目で藤ヶ谷を見ても、背を向けたまま何やら身体を動かしてる。無反応…っ、



見向きもされてない、なんで…？



『北山、こっち来て、座ってなさい。』



振り向いてそう言って俺を自分のそばに置いておこうとはしてくれないの？その背中はビクリ、とも動かない。



「……ねえ、玉ちゃん。」
「ん？なに。」



腕に腕を絡ませたまま、尻を浮かせて伸ばし玉ちゃんの耳まで唇を寄せた。
玉ちゃんの耳に手を覆うように添える。



「俺って、藤ヶ谷と付き合ってるよな？」



メンバー公認だ。当たり前の事を訊いたって何とも思わないだろう。



「何言ってんの、ミツ。付き合ってないでしょ。3年前位に二人は別れたでしょ？」
「.....え、え、は？.」



途切れ途切れでしか言葉を発すことができない。
寝耳に水すぎる。藤ヶ谷と同じ…


「別れてない！ずっとラブラブ！ラブラブ過ぎて一昨日だって、玉ちゃん呆れてたじゃん！」
「…え、ちょ、はあー？」



もう混乱は最高潮に達し、玉ちゃんのシャツの胸ぐらを掴み、バタバタと揺らす。



「ふじがやーっ！俺の事好きだって、言ってよー！やきもちやけよーっ」
「え、わ、ミツ！やめてー。伸びる伸びる！俺ガヤじゃねえしっ」



慌てる玉ちゃん。玉ちゃんのこのシャツが衣装なのか私服なのかは、この際今はどうでもいい。
混乱をどうにかしたくて、縋り付く。



「玉ちゃんとキスするぞっ！いいのかー？藤ヶ谷！」



もうこうなれば、力技だ。見向きもせず、没頭してる藤ヶ谷の背に視線を送り、脅すつもりで尋ねる。さすがに、キスまでは許さないだろう。
「俺以外に触るな」とか「北山が可愛すぎて心配」とか。いつも面倒くさいほど心配性な藤ヶ谷がそれを許すはずがない。



案の定、ずっと背を向けていた藤ヶ谷が振り返って、その切れ長の瞳とパチッと合った。
良かった、やっぱりそこまでは藤ヶ谷だって謎の演技を貫けなかったんだよね。



「別に勝手にすれば。でも、お前恋人いるだろ」



…その恋人がアンタなんですけど。

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