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………、
衝撃的だった。
大きく違うことは、藤ヶ谷と俺が恋人関係にあるということ以外にもあったことが。
俺の住んでる世界では、横尾さんは恋人がいる。
相手は男性だが、俺も知ってる同業者だった。
その人といる横尾さんの笑顔が偽物だとは思ったことがないし、藤ヶ谷ともマジでの親友としての関係だと思える。
でも、こっちの世界では俺の日記を読む限り、横尾さんは藤ヶ谷を好き、ということなのだろう。
自分だから、分かる。
もし、自分の世界で横尾さんが藤ヶ谷を好きだと知ってしまったら、俺は同じように別れを選んでいたかもしれない。
いや、でもそれはきれいごとだと思う。
自分だが、自分ではないから、客観的に見ることができる。
だから、気付ける、誰も報われていないことに。あからさまに、誰も幸せじゃない。日記に藤ヶ谷のことばかり書いてる俺も、俺を想ってくれてる藤ヶ谷も。友情に見せかけた偽善を俺から向けられた横尾さんも。
誰も報われていない。
ね、こっちの世界の俺、それでいいの?
引き出しに転がっていた芯の削ってない丸みを帯びた鉛筆を握ると、走らせた。
世の中に偶然がなく、必然しかないというのならば。今俺がこの地に足をついているのは必然だ。
社長に導かれた俺ら7人だって偶然のようで偶然じゃない。偶然という名の奇跡、必然だ。
「ふぅ」
パタンと分厚いダイアリーを閉じるとその勢いで風が出来る。
その微かな風が希望の風であってほしい。
閉じた日記は、ふやけた痕を残してしまった。
横尾さんとのロケ。
こっちの世界でももちろんネットは発展していた。
その有料会員向けのコンテンツのロケが入っていた。
引き出しに戻し、椅子は床を滑り机に手をつきながら立ち上がった。
*
洗面所の広い鏡に映る自分の目が真っ赤だということにシャツのボタンを閉めたあとで気がつくと、こんなにも、泣いてしまっていたことには自分自身意表を突かれた。
マネージャーの車で待ち合わせ場所に着いてから、のびをする。腰か反り、自然と骨の鳴る音が響いた。伸びをすれば、青空が視界に広がる。車窓から見る景色とは、色が違う。
何とも清々しい。入道雲が立派でこのまま腕を伸ばせばちぎって食べれてしまいそうだ。
「ミツ、おはよ」
その声に、腕を降ろし振り返った。
黒髪短髪が似合う、白い歯のメンバー。
青いシャツが光ってみえる。
「おはよう、横尾さん」
笑みは自然と映せたと思う。
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まいまい(プロフ) - 無事に還ってこれましたね…でも別れている世界線の2人がまだ結ばれてない!!どうかどうかそっちの2人とYさんのこともよろしくお願いします!! (2021年6月9日 11時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 1632さん» 1632さんっ!いつもありがとうございます!もうすぐ他の長編が完結するので、こちらも執筆始めます…!長らく更新せず、遅くなってしまい申し訳ございません(;▽;)本当にいつもありがとうございます!感謝でいっぱいです! (2019年10月6日 11時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
1632(プロフ) - こんにちは、北山くん戻れてよかったです!もうひとつの世界の北山くんも幸せになれたかすごく気になります(><)続き楽しみにしております! (2019年10月3日 21時) (レス) id: a09880b79d (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 魚さん» 魚さまっー!わわー!今作もご覧頂き本当にありがとうございます…!嬉しすぎます(;▽;)いつもありがとうございます!はい!飛び蹴りくらっちゃう恋人のFさん、書いてて楽しかったです!更新またしたいと思いますー!違う北山くん目線、少し不安ですが〜!書きます☆ (2019年9月4日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 飛び蹴りを食らっちゃう藤ヶ谷さん可愛くて思わず笑ってしまいました!笑 元の世界の北山くんに出会えて何より嬉しいですよね〜(*^^*)! お仕事大変そうですが、お体大切にしてくださいね。゚(゚^ω^゚)゚。!更新また楽しみにしてます〜! (2019年9月2日 1時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももは | 作成日時:2019年8月15日 22時