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「何で前に行くんだよ!」
藤ヶ谷は体勢を崩しそのまま俺の隣へと倒れこむように座った。軽い衝撃でサングラスが外れる。
なぜか顰めっ面してる藤ヶ谷だが、マネージャーがミラー越しに「時間がないので、早くシートベルトをお願いします」と急かしたため、無言で伸ばしたシートベルトをカチッと嵌めた。
「……なに?」
愛想ない藤ヶ谷の態度に、最近はそんなに低くないと自分で思っていた怒りの沸点へすぐに到達した。
は?なに?ってなんだよ。
お前が昨夜ぶっちしたんだろ、10周年記念日だったのに…!忙しすぎて、忘れたんかい!そりゃ稽古でいっぱいいっぱいなのは分かってるけどさ!
誘ってきたの、そっちじゃん!
俺は無理しなくていいぞっつったのに!
北山が俺の薬箱だと、先輩たちのお前が好きな名曲に合わせて抱きしめて誘ってきたんだろ!
覚えてねえのかよ!
と、叫びたくなっが、マネージャーの手前吐くことは出来ず、背もたれのシートで隠れるのをいいことに、ぎゅっと手を握りしめた。
大きくはない手。長く細い指。
この手でいつも俺を包み愛してくれる、その愛くるしい指に絡ませる。
「……何かあったのかと思った。」
言いたいことは溢れてるのに、
未明の胸騒ぎが思い過ごしだと分かり、安堵の方が強かった。
きっと、忙しくて忘れてしまったんだろう。
それを許すのも愛だ。幼稚な嫉妬などしたくない。
「……は?」
それなのに、なんだその目は。
まるで汚いものでも見るような切れ長の目と、引き攣る口元。そして、冷たい声。
「は?」
思わず、俺も同じように繰り返していた。
途端に、ぱっと絡めていた指を解かれる。
サッと引いた自分の手を大袈裟に藤ヶ谷はパーにして、見詰めていた。
「どーした?」
目を見開き僅かに震えてる腕にそっと指先で触れながら訊けば、ぱっと払われる。
「北山こそ、どーした」
いやいやいや、別に俺は!どうもしてねえし。
「ここでこんなことしたのは、ごめん。でも話がしたくて、つい」
TPOをわきまえるというのか、普段はこんな事をこんな場所ではしない。
二人の事はメンバーは知ってるが、事務所は知らないから。こうしてバンで絡む事は控えていた。
「あのさぁ、なんで今日あんな所から乗ったの?」
「……あんな所って、あそこがウチじゃん。」
は?え?
「違うだろ、藤ヶ谷のマンションは……」
藤ヶ谷のマンションの名を告げれば、藤ヶ谷の顔が曇っていく。
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まいまい(プロフ) - 無事に還ってこれましたね…でも別れている世界線の2人がまだ結ばれてない!!どうかどうかそっちの2人とYさんのこともよろしくお願いします!! (2021年6月9日 11時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 1632さん» 1632さんっ!いつもありがとうございます!もうすぐ他の長編が完結するので、こちらも執筆始めます…!長らく更新せず、遅くなってしまい申し訳ございません(;▽;)本当にいつもありがとうございます!感謝でいっぱいです! (2019年10月6日 11時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
1632(プロフ) - こんにちは、北山くん戻れてよかったです!もうひとつの世界の北山くんも幸せになれたかすごく気になります(><)続き楽しみにしております! (2019年10月3日 21時) (レス) id: a09880b79d (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 魚さん» 魚さまっー!わわー!今作もご覧頂き本当にありがとうございます…!嬉しすぎます(;▽;)いつもありがとうございます!はい!飛び蹴りくらっちゃう恋人のFさん、書いてて楽しかったです!更新またしたいと思いますー!違う北山くん目線、少し不安ですが〜!書きます☆ (2019年9月4日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 飛び蹴りを食らっちゃう藤ヶ谷さん可愛くて思わず笑ってしまいました!笑 元の世界の北山くんに出会えて何より嬉しいですよね〜(*^^*)! お仕事大変そうですが、お体大切にしてくださいね。゚(゚^ω^゚)゚。!更新また楽しみにしてます〜! (2019年9月2日 1時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももは | 作成日時:2019年8月15日 22時