囲われたミツと花【前編】

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テレビで何度か見た事のある景色が、目の前に広がっている。


青い空にポツポツと白い雲が浮かび、空と地上を結びつけるように白い橋が架かっている。
その橋の間を突き破るように空に向かって紅い鉄塔が伸びていて、見上げれば…青い大きな女神の像が片手を上げ、何かを訴えているのが目に入る。


陽の光が新緑を透かしていた。
蒼く茂っていた。



「自由の女神像だよ。本場さながらに建ってる。本場ってニューヨークなんだけど、やっぱ見た時は鳥肌立ったわ」
「…玉ちゃん、ニューヨーク行ったことあるの？」



テレビの世界でしか、見た事のない景色。
箱の中だけだと思っていた世界は、現実だった。



「あるよ。ミツも行こうよ。連れてってあげるから」
「…連れてってくれんの？」
「うん。ミツが行きたいところなら、どこでも。」



ドライヤーで、髪を乾かしてくれた後、外を出るのが怖いと言った俺に、玉ちゃんは、このまま逃げたらまた元に戻るよ、と強く言った。
その瞳は、俺を映していて真剣に思えた。



玉ちゃんは、違う部屋に行くと何かを持って戻ってきた。
「荒治療だけど、遊びに行こう。」そう言って、差し出したのは、服だった。「ミツに似合うと思って買っておいたんだ」「何があってもミツを守るから」



手を差し伸べてくれた。



外に出よう、と。



震える俺の手を引いてくれた。



立ち上がらせてくれた。



玉ちゃんの言う通りだと思った。
怖い。すごく。でも、ここで怖いと言って逃げて引きこもったら…また同じだ。



「…玉ちゃん、ごめん。守ってください」



深く頭を下げた。
玉ちゃんは、クスッと笑って「光栄です。あ、防犯ブザーね」とポケットにストン、と入れてくれた。安心の重さを感じる。



そして、今──
都内を観光してる。
敢えての観光地に行こうと、玉ちゃんが提案をした。
人が多い所は、ある意味安全にもなる、と。



連れられた観光地は、よくテレビで見た事のある所だった。
朝のニュースだったり、昼の情報番組だったり、夜のバラエティ番組だったりで。



テレビ局だった。
展望台には、朝見てるニュースのセットがありテンションが上がった。
玉ちゃんも楽しそうに写真を撮ってる。
そんな玉ちゃんを見てると嬉しかった。
太輔とは、二人でこんな風に出掛けたことがない。


親に連れられて出掛けたり、複数のツレとは遊んだりしてたけど。


太輔は誰かとこんな風に遊んだりしてるのだろうか。今の外での太輔を知らない。

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