囲われたミツと花【前編】

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確かに、ケーサツは困る。
事が大きくなり、コイツが俺の名を吐いてしまえば全てが終わる。
コイツの判断が必ずしも、間違ってる訳じゃない。
ただ、ひとつ言いたい。何で、通報されるような場所で手を出したのかと。



「…なぜ、通報されるような場所で手を出したんだ。もっと人目のつかない所へ呼び出すように指示しただろ？」
『 人目のつかない所だったんすよ！公園の公衆便所ですし！なのに、見つかったんです…！』
「…それは、どんな奴だった？」



嫌な予感がする、
囲うことが愛する事ではないと俺に言い放ったアイツの顔が浮かぶ。
宏光に洗濯を教え、料理を教え…
生きる希望を与えたアイツの顔が…



宏光が俺に内緒で、逢いに行ってるアイツの顔が…



そして、コイツを選んだ理由は…
似てるアイツの顔を見ると脅えるように、と植え付けさせるためだった。



『 よく分からないんすけど、ソイツ、自分になんとなく似てました。』




やっぱり、玉森だ。
最悪だ、どうすれば…
もうコイツは使えない。



「…今回は、失敗だから。報酬は、半分にさせて貰う」
『 、わかりました。申し訳ございませんでした』



役立たずめ。
スマホを叩き割りたくなる。その気持ちを何とか抑え、通話を消すと、デスクに戻りプレゼン資料を切り上げ、「外回り行ってきます」と告げ、鞄を片手に、オフィスを後にした。



監視カメラを見ていたが、まだ帰ってきてなかった。という事は、宏光は玉森の所に居る。
念の為に、自宅に電話をしても、コールのみで留守電に切り替わり、宏光の声は聞こえてこなかった。



「くそっ....」



何で上手くいかないんだ。
泳がせていたのも、今日のこの日のためだったのに。引きこもりになったキッカケを強く思い出させ二度と外へなど出たくないと思わせるために気持ちを押し殺し、見て見ぬふりをしていたんだ。



もう、見て見ぬふりなど、出来ない。



早く籠に戻さないと…
取り返しがつかなくなる。


一度、羽ばたいてしまえば鳥は戻ってこない。


甘い蜜を、蜂に奪われる訳にはいかないんだ。



宏光が俺なしでは生きていけないんじゃない。
俺が宏光なしでは、生きていけない。




ジャケットも着ずに、クール・ビズの期間とは言えとても外回りに行くような雰囲気ではないと思う。
傍から見た表情は、恐らく般若のようだったと思う。



タクシーを拾い、自宅マンションへと急いだ。
もどかしい距離。
絶対に、離さない。
あんなヤツに渡さない。

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