恋は何歳まで出来ますか？

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12階のボタンが光る。
エレベーターの表示は、1階ずつ上がっていく。
もう母さんたちも集まってるという連絡が、二階堂さんから着ていた。


エントランスで聞こえてきた声は健ちゃんだった。
マンションの部屋の前の門を開け、玄関の前に来たという知らせのチャイムを押す。


スピーカーから『開いてるよ』という声と一緒にロックが解除された音が『カチッ』と聞こえた。



部屋に入ると、
靴が5人分あった。
母さんのストライプが入った白いスニーカーと父さんの磨いてある革靴。
健ちゃんのヒールだろうものと、二階堂さんの皺のよってる革靴。息子の渉という人のだろうか？黒に白の模様が入ったハイカットのスニーカー。やばいこれ、かっこいい。教えてもらおう。



そんな風に思いながら、出されていたスリッパを勝手に拝借して、灯りがついている方へと歩く。
なんだよ、お出迎えもナシかよって思ってしまう自分はまだ大人になりきれていない。
放っておいて欲しいけど、構ってほしい。そんなワガママな年頃だった。



扉の向こうの声は、聞こえない。
防音がしっかりしてる構造なのだろうか？


そんな風に思いながら、お土産に買ったケーキの箱を片手に、ドアを開ける。



ドアを開けると、そこには誰もいない。


え？


なに？違う部屋だった？


そんな風に思って、キョロキョロしてしまう。
テーブルの上には、一切の食事がない。
飲み物も。食べ終えた粕も。ゴミも。
前来た時と何一つ変わらない家具の配置。



あのテーブルで宮田のことを打ち明け、二階堂さんに否定されたことを思い出す。
オレはこれから一生、叶わない恋をし続けることをまた描き、泣きそうになる。
何度も何度も泣きそうになった。
そのたびに否定し続けて、自分を奮い立たせていた。



「………っ！」


…なんでっ、


身体が反応した。


誰にも動かなかった心が、再び動き出す。
動揺、戸惑い、疑い、


もう約一年も会っていない。
それでも、わかる。求めてた。
顔なんて見なくてもわかる。



「…宮田っ」


「…へへっ、久しぶり」



「なんで…！」



背後から聞こえた声は、たった数日しか聞いていなかった声。
背後にいるから顔も見えない。でも、確信する。




汗ばむ手のひらを握りしめた。振り返ることも出来ずに。



「逢いたくて、さ。ニカにお願いしちゃった」



その何度も聞きたかった声に
自分の強がるクセが邪魔をする。

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