恋は何歳まで出来ますか？

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仕事は終わったのに、宮田を見送りにいくのが怖い。何で花さんと会っていたのか。手を握られていたのか。宮田の優しい笑顔の意味はなんなのか。
そんなの考えなくても、理由は分かった。
だって、子どもじゃないから。


駅についた。
待ち合わせの改札口前。
日曜日の夜、旅行帰りの人が多い。
様々な人が他人にはまるで興味ないように歩いてる。笑顔な人、俯いてる人。疲れてる人。幸せそうな人。月曜日が来るのが憂鬱な人。これから楽しみが待ってる浮き足立つ人。


その中に、宮田はキョロキョロしながら、スマホ片手に立っていた。
オレからは宮田が見えるけど、宮田からは死角になって見えない所から宮田を見ていた。


約束の時間、5分が過ぎた。
宮田からは連絡が来ない。
宮田が乗る新幹線の出発時間、30分きっている。


宮田から連絡が着たら…
全て見なかったことにしよう。
泡に流そう、そう決めていたのに。
宮田は15分過ぎても、連絡をよこさない。
同じ場所でキョロキョロと棒立ちになってるだけ。


オレのこと心配じゃないの？


乗車予定時間、10分切ったところで、タイムオーバー。


宮田は悲しそうな表情さえしていない。
"好きだ"と一度も言われていない事実がここでのしかかってくる。
"花ちゃんは特別だから"
その言葉がすべて。
宮田たちの20年にオレなんか童が到底追いつくことも出来なかったんだ。



スマホを手に取り、イヤホンを通して電話をかける。テレビ電話じゃない。
"周りの音を消すモード"を設定し、ここがどこか分からないように声をクリアにさせる。


ワンコールで宮田は出た。


『もしもーし！裕太くん、お疲れ様。仕事終われなかった？』


会えなかったことを何とも思ってない明るい声で。


「…うん。ごめん。今日いけないわ」
『そっか。残念だけど、仕方ないね。また会いにくるから』


平気なトーンで返ってくる。
また、っていつ？



「昼さ、ロケで外出てた時…偶然宮田と花さんが会ってたの見たんだけど。何かあったの？」
『あー…。うそ、見たんだ？！声掛けてくれれば良かったのに』


かけられるのなら、かけたかった。
かけて、安心したかった。
ただ、忘れ物を届けてもらっただけだよって言われたかった。



「何か楽しそうだったから。花さんに復縁迫られた…とか？邪魔できない雰囲気だったし」
『うそ、聞こえてた？！』



…聞こえてた？！
それは肯定を示す言葉。



『戻りたいって言われたこと』


聞きたくなんかなかった。

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