恋は何歳まで出来ますか？

残酷だよ、その言葉は ページ19

裕太と宮田くんは、食事に行ったと思われたその夜…別々に帰ってきた。
裕太が先に帰ってきて、私に抱きつくとそのままぎゅっと抱き込められた。
いつもと違う裕太の背中に腕を回し、背中をトントンと叩いた。


途中たいちゃんが風呂から出てきて、何か言おうとしたのを、私はジェスチャーで"しっー"とやり制止した。


裕太は何も言わないけど傷ついた時、今のように無言で訴えてくる。


宮田くんが一緒に帰ってこないということは、喧嘩や何かしてしまったんだろうことが窺えた。


応援したい、でも背中を簡単には押せない



「お腹すいてない？」
「…空いてない」


という事は、何かしらは食べたということか
その相手は宮田くんだろうけど。


「そう…」


そう言って、無言でそうしてること、たいちゃんの眉はだんだんだんだん寄っていて、もうくっついて眉間なんてなくなるんじゃないかの状態だった。


裕太は背中を向けてるから、気づかないけど
棒立ちしてる父さん、結構面白いよ？



「救世主には明るい未来が待ってるよ」


だから、沢山悩みなさい。
裕太は私とたいちゃんを結んだかけがえのない存在。その存在が不幸せになるはずがない。



私がそう言うと、裕太は私の髪を撫で、振り返る。


「父さん…。母さんを借りてごめん」


そう言う裕太をたいちゃんは、思い切り背中を叩いていた。それはまるで無言の喝のようで。


「母さんは裕太のでもあるから。父さんもな」


そうだよ、裕太。


宮田くんが、何を裕太にしたかは分からないけど、
母親としては見て見ぬふりはできないな。



部屋に入って行く裕太の背中をたいちゃんと二人で見つめていた。



子が大人になるのを見守る母の気持ちを教えられた気がした。



「こうちゃんは、まだ大人にならないよね…」



弟の宏太まで大人になるのは、まだ母としては寂しすぎる。



肩を落とす宏光の肩を微笑みながら藤ヶ谷は抱き寄せた。



＊



裕太が寝静まった頃、日付けを越えそろりそろりと帰ってきた宮田の帰りを待っていたのは、宏光だった。


太輔は明日も仕事なため、宏光だけがリビングの茶色いレザーのソファーに尻を沈め待っていた。



音を出さないようにドアを開け戻ってきた宮田に目を光らせて。



「…おかえり」
「ただいま…」


少し低い宏光の声に、びくりと肩を揺らし、背筋を伸ばす宮田。


「花から連絡があったんだけど、どういうこと」



テーブルの上には画面が光るスマホが置かれていた。

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