恋は何歳まで出来ますか？

. ページ17

「ねえ、オレさ。ちょっと意味がわかんないんだけど」


アラフォーなのに少年の二階堂(夫)は言った。


「何が？わかりやすい説明じゃない。裕太くんは宮田くんが好きで、約束を破られて腹を立ててるって」


「…健ちゃん」


裕太は全部話した。「絶対に母さんには知られたくないから、秘密にして」と釘を刺した上で。
すべて話した上での二階堂の意味が分からない発言だった。



「だってそうでしょ。裕太くんが宮田に惹かれてる理由って何？」


「…惹かれてる理由、」


ずばり、二階堂さんに言われて考えたこともなかった。過去で会った時も別に何とも思わなかったし、そのことはさすがに言えない。
惹かれてる理由…それは…



「…可哀想だから」


離婚して、辛いはずの宮田は無理して笑ってる。
その無理した笑顔を見たくなかった。
自分が、心からの笑顔を出させたいと思った。



「可哀想だからは、理由にならないよ。裕太くんは、ミツと同い年の宮田に惹かれてるだけじゃない？あの二人雰囲気ちょっと似てるし。ふわふわしてるのに芯が強いとことか」


「…似てない！母さんのが可愛い！」


「…まあ、それはそうだけど。オレは応援できないかな。一緒に住むように提案して悪かった」


「ちょっと、ニカ…」


「健ちゃんは黙ってて」



二階堂の冷たい言葉が裕太を傷つける。
それを健美が止めようと、二階堂の腕をぎゅっと掴むけど、二階堂はその手の甲に指先を重ね、首を振った。


テーブルには、コーヒーと食べ終えたケーキのフィルムがフォークと一緒に小皿の上に乗っているのが置かれている。


先程、健美が淹れ直したコーヒーはまだ湯気が立っている。そのコーヒーとは裏腹に冷たい言葉が裕太に刺さる。



「別に応援してもらわなくても。」


二階堂の予想にもしていなかった言葉に、裕太は一気に不機嫌そうに溜め息を吐いた。



「宮田とは20も違うんだ。それにバツがついてるし、可哀想だからという同情だけで、踏み込むのはやめなさい」


少年のような顔をしてても、この人も結局考え方は古い、裕太はそう思った。今の時代、同性同士だって、年の差婚だって普通だし、認められてる。



「…だから、平成生まれの年寄りは嫌いだっ！」



裕太は湯気がたってるコーヒーをそのままに立ち上がると、鞄とコートを勢いよく掴み、その場から出ていった。玄関でガチャっと聞こえたドアの音。


健美が追いかけようとしたのを二階堂は止めた。

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す