恋は何歳まで出来ますか？

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「…花さんが、まだ好きなの？」


「嫌いになれたら、楽なのにね」


シンク越しに問いかける。
スポンジに泡を立て…洗い出した皿がカチャッと鳴った。



浮気されても、好きでいる。
オレには理解できない。
両親を見て育ったから、浮気なんて悪でしかなくて
不倫なんて地獄に堕ちる行為だと思ってた。



「…オレが洗う。」
「え？」
「宮田は休んでて」
「いいよ。裕太くんは準備してくれたじゃん」
「別に」


立ち上がって、宮田の隣まで行くと、その手に持っていた泡立ってるスポンジを奪った。
一瞬触れる指先、それ以上触れることなく、宮田は大人しく手の泡を流すとその場を離れた。



対面キッチン。
シンク越しに宮田は回り込んだから、
顔を上げれば真っ直ぐには宮田がいる。



「俺ね、朝食を誰かととるのもう10年以上ぶりなんだ。」
「…そんなに？」


そう言えば、ここに来てからも宮田は朝早いし、朝食は腹に入っていかないからって食べずに出ていってしまうと母さんがボヤいてた気がする。



「朝はギリギリまで寝てたいし、休みの日も昼までだらけることが多いし、一人でいることが多かったから」
「……」
「だから、嬉しかった。朝食、準備してくれてありがとう」


えへへっと照れ笑いする宮田の癖をもう見つけた。
本音を笑って誤魔化す。
本当は傷ついてるくせに笑って誤魔化す。



「オレがこれから宮田と朝食とってあげても…いいよ。別に食べたいもの言ってくれれば作るし」


「ありがとう。でも悪いなあ」


「…パンツも洗ってあげてもいいよ」


「ははっ、裕太くんはいいお嫁さんになるね」



顔を上げて、チラリと確認すると目尻に皺が出来ていた。笑った時にくっきりと浮かぶそれが…
嬉しい。
宮田が作り笑いじゃなく笑った時、嬉しくなる。


落ちにくいカレーの油だって気にならない。


"何で、父さんはそんなに母さんに尽くせるの？"


中学に上がった時、うちの両親が特別仲が良いんだと知った。
母さんに働いて欲しくないと父さんは常々言っていた。でも、気分転換も必要だろうと友達のランチやママ会には進んで参加するように勧めていた。


そのランチだって会だって、全て無料じゃないのに。


"そう？ひろのが尽くしてくれてるよ？"


平然とそう返された。



"そうかなー？"


"裕太の瞳にはどう映ってるか分からないけど、好きなら尽くしちゃうんだよ"



好きなら、尽くす。
父親の教えは偉大だった。

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