ファシネイティングワールド - 1 - 【完】 (ページ37)

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「ねぇ、」

「……はい」

「あんたじゃない。てめぇらだ」

相沢謙吾が呼び掛けるから答えたのに、どうやらそれは私にじゃなく先輩や、車の中で顔面蒼白になりながら慌ててる人達の事だと思う。

その証拠に、私を捉えていた瞳が先輩達へと移動していた。

「あんたら堕天使の奴等でしょ？頭(アタマ)は馬鹿だから副チョーのタイガに伝えといて。２度とこの国道沿いを溜まり場にすんなって」

「は、はい！」

「見付かったのが俺で良かったね？バクに捕まってたらこんなもんじゃすまないから」

「す、すみません。ごめんなさい……」

……この人、本当に何者？

あんなに高飛車に私を殴ってた先輩や、怖そうで厳つい族の人達が今では涙目で許しを請う。

……もしかしたらこの男も、どこかの族やチームの一員なのかな？

変な光景。この街は私には分からない事だらけ。

くだらない。帰りたい。

先輩達は相沢謙吾しか視界に入れてないし、今なら逃げられる。

「………」

なのに――――――変だ。体が金縛りにあったように動かない。

どれだけ脳が動けと命じても、体がそれを拒否する。

頭が、体が、感情が。まるでノコギリでギコギコと切られてるように千切れ、バラバラになって……

脳内に霧が掛かったよう、真っ白になる。ボーッとする。

今更ながら、蹴られた腹部が痛みに悲鳴を上げた。

「ねぇ？」

「っ…」

だから相沢謙吾がバイクから降り、私に近付いてきたのに気付かなかった。

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