87.兄弟のカタチ ページ41
河口湖の辺りをふたりで歩き回る事数十分。
光はやや俯きながら歩いていた。
ふと歩みを止めたエマ。光も同じように立ち止まる。
「湖を見てごらん」
その声につられるように光は河口湖に目を向ける。河口湖の水面が赤くに染まった空を映し出し、幻想的な風景を作り出していた。
「ふたりだけで見るのがもったない…今度はA先輩達とも見に行けたらいいね」
「そうですね…」
この景色を見るのはこれが最初で最後と言うことは光は理解していた。目に焼き付けるように河口湖の景色を見ていた。
「一星くんはみんなでサッカーするのは楽しい？」
突然、尋ねられたので言葉に詰まった。
エマは光の答えを待っている。
「…もちろんです。皆さんとサッカーをしているとすごく楽しいです。でも…」
光は寂しそうに目を伏せる。エマは何も言わない。
「僕は償わなければならないんです。皆さんにやったことを」
光の言葉を最後に身体から意識を飛ばす＿いわゆる幽体離脱を行った。
エマが霊体となり、身体から出てくるのを目視した充がエマの体に入る。
充が目を開けると、弟の寂しげな横顔が見えた。霊体にはない重みを感じる。
思わず自分にはない物を充は触りそうになったが、背後から鋭い視線を感じて、わざとらしく咳ばらいで誤魔化す。
光が見ていなかったのが不幸中の幸いと言える。もしも、見られでもしたら充が消されていただろう。
仕切り直すように身だしなみを整えて、光の横に並び立つと口を開く。
「…光は重く考えすぎだ」
光が顔を上げてエマの顔を見る。隣にいたはずのエマは消え、自分の兄がそこにいた。
「稲森達はそんな事思うような人達じゃないだろう？」
ついに兄の幻まで見え始めていると思う光だが、目の前にいる人物は紛れもなく兄の充だ。
「だからさ」
充は後ずさる光に手を伸ばして抱きしめた。
「光はここにいてもいいんだ」
自然と涙が光の頬を伝ってこぼれ落ちる。溢れ出した涙を拭うことなく、嗚咽を漏らす光を充は優しく撫で続けた。
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加奈子(プロフ) - 星野結花さん» ありがとうございます！ (2019年12月1日 21時) (
レス) id: a62379125a (このIDを非表示/違反報告)
星野結花 - この小説すご〜く好きです!これからも頑張って下さい!応援しています(*^_^*) (2019年12月1日 10時) (レス) id: 09968e6ae8 (このIDを非表示/違反報告)
加奈子(プロフ) - りんねさん» 楽しんでいただけて幸いです！ (2019年6月14日 20時) (レス) id: a62379125a (このIDを非表示/違反報告)
りんね - 妖怪ウォッチもイナズマイレブンも大好きだから見てて楽しいです！ (2019年6月14日 20時) (レス) id: e73a160d29 (このIDを非表示/違反報告)
コロニャん - 返信ありがとうございました！ (2019年6月8日 13時) (レス) id: d3d7c71152 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：加奈子 | 作成日時：2019年4月4日 19時
