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歯が痛くなるほど甘く ページ38

チラリと視線を投げた先でとうの彼女は、くるりとボールペンを器用に回して小さなカードに何やら書き込んでいた。

てっきりいつものように仕込みか売り上げ計算してるかと思えば、何をしているんだろう。

いつもならカウンター越しとはいえ近い距離にいるのに今日は遠くて、気軽に声もかけられない。

見られている気配を感じたのかパッと顔を上げたAからとっさに逃げるように目を泳がせると、いつも座る席にメニュー表が伏せて置かれているのに気がついた。

ドキリ、と心臓がひとつ跳ねる。

「……まさか、ね」

たまたま。偶然。きっと、しまい忘れていただけだ。

来る日をあらかじめ予告しているわけでも無い山姥切をまるで待っていたかのように思えてしまう光景に、そんな都合の良い願望ごと目を逸らした。

そんな山姥切に旧友たちは顔を見合わせると肩を竦め、残りわずかだった飲み物をあおって席を立つ。

ここに来たのは野次馬根性だ。

人間大好き激甘グラブジャムンこと山姥切がまさかの妖怪に恋する前代未聞の事態が面白すぎたから。

見た目にそぐわず「力こそパワー!」みたいな特攻型の性格をしている山姥切がうじうじモダモダしてるから。

想い人…人?妖?の、顔は見た。いや素顔は見れてないけど為人はなんとなく。

「ま、せいぜい頑張るこった」

「相談はいつでも乗りますからね!」

ジャンケンで負けて5人分の代金を支払う山姥切を置いてさっさと店を出る。

ヒュウっとやや温かさを宿してきた風が吹いた。
ゴタついた厳冬が過ぎ、春はもうすぐそこまで来ている。

春は恋の芽吹く季節ですね、と物吉が楽しそうに呟いた。






扉の向こう。

そうして固まって話す徳美メンバーに付いて来られたあげくなぜか奢らされた山姥切は、奢らされたのではなく奢ってあげてるのだ風な空気を醸しながら支払いを済ませて背を向けた。

今日はあまり話せなかったからなにか雑談でも……と思ったけれど、連れを待たせるのは主義じゃない。

ちょっとばかり後ろ髪引かれながらドアを半分ほど開けたところで、

くいっと控えめにストールを引かれた。

雛は巣立っても子であると→←だって神様だもの。ちょぎを



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翡翠琥珀@カリナと咲(プロフ) - ァ"ァ"ァ"好きぃ... (2022年3月31日 15時) (レス) @page42 id: cceed3ce75 (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - 返事がない只の屍のようだ。さん» ちょぎくんの布教が出来て嬉しいです!沼へようこそ。 (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - sesiroさん» ありがとうございます。成り鶴もよろしくお願いします (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - まるさん» ありがとうございます (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
返事がない只の屍のようだ。 - はじめまして!そして完結おめでとうございます!!大好きです!!!終わってしまい寂しいですがちょぎ君、思い出して貰えて良かったね゙ぇ〜!(T△T)ズビィ この小説を切っ掛けでちょぎ君にハマりました!ありがとうございます!!(謎)これからも頑張って下さい! (2021年3月5日 12時) (レス) id: 2157a47614 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mokohu | 作者ホームページ:http://nanos.jp/atlant2d/  
作成日時:2020年12月5日 14時

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