【刀剣乱舞】転生したら妖怪だった件【2】

一方通行ほど虚しいものはない ページ20

「無償の愛なんか無い、とは言わないわ。でもね、無限の愛なんて無いのよ」


阿津賀志山に打ち捨てられ、度重なる圧倒的練度差のある戦闘で心身共にボロボロになった山姥切を拾った赤目の妖怪は、
未来のこと、
時間遡行のこと、
そして刀剣男士という存在を上手くボカしながらした状況説明に対してバサリと大きな漆黒の翼で口元を隠し、困った子を見るような目をしてそう言った。


どれだけ酷な扱いをされても、
「人間だから仕方ない」「間違える生き物だから」そうやって自分を納得させて、諦めないで叫び続けた言葉がいずれ届くと信じた。

長い歴史で愛してくれたから、愛を返した。

愛してくれた人間は己を顕現した主ではないと分かっていたけれど、持てるものだから。
持たせてくれたから。


「誰しも見返りは欲しいもの。神も、人も、妖も。
愛は受け取った分を返すものであり、無限に湧き出るものじゃないのよ。
その容量は、人によりけりかもしれないけれど、与えるばかりじゃすぐに底をつく。今の貴方みたいにね」

山姥切が人に与え続けて来た愛を否定はしないけれど、その行いは否定された。

「一方的に与えるだけの関係は相手を図に乗らせるだけよ。どちらのためにもならない」

なんて厳しく言い放ちながらその手は優しく山姥切の刀身を撫でた。

「言葉を聞く気のない耳にいつまでも叫んだところで、こちらの喉が潰れるだけだわ」

じわり、じわりと人間のものとは違う力が滲み渡る。

審神者の霊力は顕現時に注がれたきりだったし、その後は存在否定のオンパレードだったのでろくに覚えちゃいないけれど、妖力を注がれるというのは不思議な感覚だった。

「あらぁ……ほんとに刀が直っていく」

とうの本人はその現象に「ふっしぎ〜」なんてほけらっと疑問符を浮かべている。
助けてもらっておいてなんだが、もっと不審がってもいいと思う。

「おおらかが過ぎないかな」

「数百年妖怪やってるとこの程度じゃ驚きようもないわ」

なるほど。
かの白い太刀なら死にそうな事態だ。
いやむしろその経験があったからこそのあの言動なのか。

ということは平安から生きてるという彼女も未来ではあんな性格になるのか？
……ぜひこのままでいて欲しい。


たびたび聞くやらかす平安ジジイの話題を思い出して少し頭が痛くなった。

未来は枝分かれののち収束する→←赤い糸の素材はなんだ

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