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「うーん、泣いてばかりで話になりませんね」






「でも見ていて面白いですね」







「大の大人が情けない…あらあらまた泣いて」







「可哀想に、では次の質問行きますよ」








尋問室、ではなく個室から聞こえる声に福沢は眉間を押さえる。
異能者のすすり泣くような声は、大泣きする声に変わり、
二人の声は更に楽しそうになっていく。







「地獄か…ここは…」








うら若き美しい娘が二人、大人の男を泣かして喜ぶ声はたしかに地獄だった。
雪はもう少し優しくなった方がいいと福沢は思う。







「ふー、楽しかったですね」








「そうですね、喉も乾きましたし、お茶でもいかがですか?」








「あら、いいですね」








一時間後、いい笑顔で出てきた二人は親友のように話しながら部屋から出てきた。








「福沢さん、私この子と少しお茶してきますね」








「あぁ…」








雪は先にAをうずまきに行かせて、福沢にそう伝えた。
力なく福沢は了承し、ふと思ったことを口にする。








「気が合ったようで何よりだ」








そう云った瞬間だった。
雪の顔が福沢の目の前に迫ったのは。
紫色の目の中、瞳孔が開いていた。








「気が合う?ご冗談を。
あんな性格の人間が二人もこの世にいて良い訳ないでしょう」








雪の冷たい指先が福沢の唇に触れた。







「冗談をおっしゃるのはこの唇かしら?」







雪の指はどこまでも冷たい氷のようだった。








「私は、あんな化け物が目の前にいることが悍ましくて仕方ありません。
人としての温もりも、正しさも、心も無い魔女」








フッと赤い唇が歪む。








「そんなもの、私一人で十分です」








雪の指先が福沢の唇から離れた。
彼女はいつものように微笑んだ。








「大丈夫、あの子は私が元に戻します。だって私…」







トッと福沢から離れ、部屋から出て行く瞬間、
彼女は何処か冷たい笑みを浮かべた。







「"あぁいう化け物、嫌いですから"」








それはまるで、自分を化け物と呼び、嫌っているようにしか聞こえなかった。







「今度来たら、お茶奢ってくださいね」








そう残し、雪は出て行ってしまった。
残された福沢は、ふと呟く。






「貴女は化け物では無い、人間だ」







その呟きは、届くことは無かった。
雪の云う通り、戻ってきたAは、やはり彼女とは似ていなかった。
福沢は、少しだけ安心した。

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もこすけ(プロフ) - anonimas594さん» 恥ずかしさが上回り、凶暴化する小泉なのでした。ご質問ありがとうございました。 (2019年12月22日 19時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
anonimas594(プロフ) - なるほど可愛らしいところもあるけどそれ故に凶暴なんですね!返答ありがとうございました。 (2019年12月22日 18時) (レス) id: ae39e9e256 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - anonimas594さん» コメントありがとうございます。はい、ききます。ですが本人も理解しているので近づかれた瞬間相手は宙を舞うでしょう。あと場合によっては殴られるので誰も小泉にやろうとしません。 (2019年12月22日 15時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
anonimas594(プロフ) - コメント失礼します!ものすごく気になったことなので質問します。小泉ちゃんって脇腹ききますか?! (2019年12月22日 13時) (レス) id: ae39e9e256 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 姫歌さん» ありがとうございます。私もとても楽しかったです。またコラボしましょう。ありがとうございました! (2019年8月17日 20時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年6月16日 20時

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