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襲撃者の男は目の前の少女の凶行に混乱していた。
この女は今何をした?
高濃度の神経毒を塗ったナイフをあろうことか相手の肌に滑らせた。







「貴方が死ぬのが先か、私が死ぬのが先か、見てみたくなってね」







美しい声色でそう囁き、再び少女はナイフを振り上げる。
二回も刺されれば今度こそ、男の顔色が真っ青になった。






「解毒薬が無いのなら、このまま死んでしまうけれど仕方ない」







震える男の耳に、少女の赤い唇が近づいた。







「己の毒で死ぬ恐怖を、じっくり味わいなさい」







悪魔のような甘い声だった。
少女は何処か"別人のように"微笑み、そしてナイフを振り下ろす。






「か、解毒薬なら…ある…!」







ピタリと、ナイフが肌に突き刺さる寸前で止まった。
男は震える手で懐から二つの瓶を取り出した。







「こ、これが解毒薬だ…頼む、ころ、殺さないで…」







その瞬間、少女は一つを男の口に押し込むと、一つを奪い取り、胸ぐらをつかむ手を離した。







「逃げずにそこにいろ」








Aは立ち上がり、急いで鐵腸の方へ向かう。
無駄な芝居を打って、半分というかほぼ脅して奪い取った解毒薬を半分飲む。
鐵腸は毒が回っているのか、目がぼんやりとしていた。







「起きて、飲める!?」







「…無理、かもしれん…」







舌が痺れているのか、それでは飲めない。








『とでも飲める様子じゃない、でも早くしないと…』







瓶の中で解毒薬が揺れる。
Aは数秒思考した後、ぐいっと解毒薬を口に流し込んだ。







『これも仕方のない事』








目が合わないように、鐵腸の目に手を置いた。
そしてそのまま、そっと彼の唇に己の唇を重ねた。







『飲み込め』








解毒薬を口から口へと流し込み、喉が上下したのを確認すると、唇を離した。
薬特有の苦味を感じながら、口元をぐぃっと拭った。







「警察は呼んでおいた、あとは一人でも大丈夫でしょう」








目をパチクリさせる鐵腸を尻目に、襲撃者の男を引きずってAはその場から消えてしまった。
残された鐵腸は、未だ痺れが残る唇に触れ、苦い唇をペロリと舐めた。









「済まない、責任を取りたいのだが」








数日後、元気になった鐵腸が先日の礼をしにきた為、
Aは不可抗力でキスをしてしまった事を思い出し、彼を全力で追い返したとかなんとか。

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もこすけ(プロフ) - anonimas594さん» 恥ずかしさが上回り、凶暴化する小泉なのでした。ご質問ありがとうございました。 (2019年12月22日 19時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
anonimas594(プロフ) - なるほど可愛らしいところもあるけどそれ故に凶暴なんですね!返答ありがとうございました。 (2019年12月22日 18時) (レス) id: ae39e9e256 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - anonimas594さん» コメントありがとうございます。はい、ききます。ですが本人も理解しているので近づかれた瞬間相手は宙を舞うでしょう。あと場合によっては殴られるので誰も小泉にやろうとしません。 (2019年12月22日 15時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
anonimas594(プロフ) - コメント失礼します!ものすごく気になったことなので質問します。小泉ちゃんって脇腹ききますか?! (2019年12月22日 13時) (レス) id: ae39e9e256 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 姫歌さん» ありがとうございます。私もとても楽しかったです。またコラボしましょう。ありがとうございました! (2019年8月17日 20時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年6月16日 20時

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