【gr】1人で帰れますが、 ページ13
｢...Aはまだ帰らないのか？｣
最終下校時刻も間近だと言うのに帰り支度の一つもしようとしない私に彼が話しかけてくる。
『別に帰りたくないとかじゃないんだけど、もう少しここに居たくて。グルッペンくんは もう帰るの？』
彼はどうなんだろうと社交辞令的なノリで返した質問がなかなかだったことに、言葉を紡ぎ終わった後に気付いた。
これじゃまるでもう少し一緒に居たい、みたいな言い方。
『ごめんちがくて、えっと、、バイバイ、また明日ね』
言い直そうとしたのに、丁度いい言葉が出てこず寧ろ状態を悪化させてしまった気がする。
熱い顔を隠すために首元に合ったマフラーを引き上げて小さく手を振った。
こっちが必死に早く帰れよと祈ってるのに、彼はそれに気付いていないのか扉前から動かない。
いや、早く出てけよ。あと2歩で廊下じゃん。
もはや恥ずかしさを通り越して１人でキレ散らかしそうになっていると、突然彼は口を開いた。
｢Aも一緒に帰らないか？｣
は？ほぼ初対面も同じなのに一緒に帰らないってどういう神経してんの？？
もしかしてさっきの発言が一緒に帰りたいと捉えられてしまったのか？いや絶対そうだな、
『あー、でももう少し私ここに居ようと思ってたから』
お茶を濁してごまかそうと目を逸らしながらこたえる。
｢もう暗くなるから、1人で返すのは危ないと思ったんだが、｣
お父さんみたいなことを言ってくる彼の距離感にほんとに初対面かと疑いたくなる。
え、話したことないじゃん。絶対気まずいって！！！！！
あらぶってる私に彼は気付いていなさそうで、早く帰ろうと、目で訴えてくる。
『わかった、うん、帰ろ』
もはや自分に言い聞かせるように答えると、彼は穏やかに笑った。
いつも後ろ姿しか見てないからわからなかったけど、イケメンだったのか。ずるいな、顔がいいって
鞄を持って席を立つと、当然のように隣をとる彼に目眩がして目を背ける。
こっちが気まずさを感じてるっていうのに、なんでそんな楽しそうなんだ。呆れ半分疲れ半分で出来たため息を落としたのはきっと私が悪いわけじゃない。
けれど当の本人は私の落としたため息にも気付いていない。
あぁ、もういいや、うん。楽しそうだからね、うん。
しょうがないから、楽しそうに歩く彼の隣を私も同じ歩幅で歩くことにした。
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杏夏(プロフ) - 山田の家さん» レス遅くなって申し訳ありません。コメントありがとうございます。好きだなんて私にはもったいないお言葉、大変痛み入ります。まだまだ 月が綺麗ですね は続きますので楽しんでいただけますと幸いです。 (2020年11月7日 18時) (
レス) id: 516edf94d7 (このIDを非表示/違反報告)
山田の家 - 続編おめでとうございます！あぁ、やっぱりすんごい好きです。 (2020年10月18日 19時) (レス) id: 9efffd34d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杏夏 | 作成日時：2020年10月18日 19時
