2話 ページ3
ザシュッ!
鬼が私に手を伸ばし首に手をかけたと思ったその時、腕が私の足元に落ちた。
「鬼が獲物を前にして周囲の警戒を怠るとはなぁ」
鬼は既に首を切られて塵のように消えていった。
鬼の首を切ったその人は顔と身体中を傷だらけにして廃刀令の敷かれたこのご時世に
刀を持っている、なんとも怖い人だった。
「立てるかァ?」
刀を鞘に収めながらその人は私に問うた。
私はというと自分が死に去らされていた恐怖で腰が抜け、
マトモに返事もできず地面に尻餅をつき続けていた。
「火の消火を急げぇ。それから生存者の確認をしろぉ」
「はいッ!」
そばにいた黒子のような服装をした人たちに淡々と指示を出していく。
一通りの指示を終え、彼は私に向き合った。
「生存者の確認をさせてるがなぁ、火の回りが早すぎだ。
生きてるのはお前だけかもしれねぇから覚悟しておけ」
…なんなんだこの人は。
もう少し労いの言葉があるだろう。死にかけていたんだぞ私は。
それからしばらくして、やはり生き残ったのは私だけだったと知らされた。
元々両親は他界しているから、泣き崩れるほどでも無かったけれど。
やはり、生まれ育った土地や昔からよくしてくれている人たちが居なくなってしまうことは
少し寂しく感じるものだった。
『あの、私これからどうしたらいいんですか…』
「あ?そんなのは自分で決めろぉ。お前ェは死ねって言われて死ぬのかよ」
そう言って彼は顔についた返り血を白い羽織で拭った。
シミになっちゃうでしょうに。
ポケットからハンカチを取り出して彼に差し出した。
『救って頂いたことには感謝していますが、私は被害者です。
件について説明があってもいいかと』
「チッ」
あ、今舌打ちしたこいつ。
そして、私は諸々の説明を彼…不死川さんから聞いた。
彼らは鬼殺隊と呼ばれる剣士と隠という組織で、
人を喰らう悪鬼を滅するために刀を振るっているのだとか。
どうやら彼についている血は返り血だけではなく、彼自身の血も含まれているようで
所々、深く切った跡が残っていた。
そのうち、私がいた村で隠と呼ばれる人たちがお香を焚きはじめた。
私は村を去るように不死川さんについて行き、
半ば無理やり刀の稽古をつけてもらうことになった。
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作者名:まゆ | 作成日時:2023年5月8日 1時