17話 ページ18
昔を思い出してなかなか寝付けない。
水を飲もうと台所へ向かうと師範が暗い中にぼーっと座っているのが見えた。
『師範、ボケるにはまだ早いですよ』
「っ!…お前か。気配消すの上達してきたな。あとボケてねぇよ」
『眠れないんですか』
「少し昔を思い出してなぁ」
『…玄弥君の事ですか?』
「聞いたのか」
『いいえ、悲鳴嶼さんと炭治郎君からですが』
玄弥くんには会えていない。
恐らく師範と炭治郎君と一悶着あったので謹慎しているか、タイミングよく稽古ですれ違っていたか。
彼に会って話が聞けたらいちばん早いんだろうけれど。
「アイツが鬼殺隊にいるなんてなぁ」
『まだ、気にしていますか?』
人殺し。と呼ばれた事を。
「そんな事は気にしてねぇよ。たった1人の弟を守れたんだ」
「あいつは静かに暮らして、女房でも作って幸せに暮らせてればいいんだよ」
昔から師範は言っていた。
玄弥君が鬼殺隊に入ったと知る前から、
弟が幸せに暮らせていると願っている、と。
弟の所に鬼がいかないように鬼を切るのだ。と。
本当に不器用な人…。
『師範、玄弥君ともう一度ちゃんと話すべきではないですか。
玄弥君も思いがあってここにいるのではないですか』
私の問いに師範は何も言わなかった。
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作者名:まゆ | 作成日時:2023年5月8日 1時