15話 ページ16
最終選別が始まって8日後。
Aは約束通り、屋敷へと戻ってきた。
山を下りてすぐ、選別の疲労で倒れそうになったらしく
近くの宿で一泊をしたそうだ。
宿に泊まることはAの鎹烏より連絡を受けていた。
「選別が終わったからってそこで全部終わりじゃねぇぞ。
これからは任務に就かなくちゃいけなくなる。日々鍛錬だって欠かせねぇ」
『心得ています』
「ならいい。晩飯にするかぁ?」
『はい』
・
Aの作った晩飯を食いながら俺は最終選別の話を聞いていた。
生半可なものではなく、本物の鬼と対峙したこと。
初日は動悸がおさまらなかったこと。
聞いたところ、初日で既に何人ものガキが鬼に食われていったらしい。
中間の3日目で入山した半分の人数の死骸を見たという。
『私は幸運でした。運が良かっただけなんです』
「鬼は何体狩ったんだ」
『4体…。たったの4体しか倒せませんでした』
「最初にしちゃぁ多い方だろ。良くやったなァ。
まぁ、初日で震えてたんだから仕方ねぇ」
刀を持ってちゃんと鬼に対峙したのが初めてとはいえ、
4体も狩れたなら十分だと。正直そう思った。
箸をすすめていた手を止めて、Aが選別前に渡したあの小刀を懐から取り出した。
『師範。お守りの短刀ですが「予備」…予備の短刀ですが、まだお借りしていてもいいですか』
「お前にやったやつだ。好きに使え」
『ありがとうございます』
Aは嬉しそうに笑っていた。
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作者名:まゆ | 作成日時:2023年5月8日 1時