1話 ページ2
パチパチ…パチパチ…
何かが弾けるようなそんな音で目を覚ました。
何かが燃えて焦げるようなそんな匂いが鼻についた。
重たい体を起こし、起き上がってあたりを見渡すと部屋の窓の外は赤い景色に包まれていた。
燃えている。
まだ寝ぼけている頭を叩き起こして家の外へ出る。
辺りの家は真っ赤にごうごうと燃えていた。
私の住む村一帯が燃えていた。家が燃え、崩れていく音に混じって
人の悲鳴が聞こえる。
私と同じようにまだ残っている人がいるんだ。
草履も履かず、裸足のままで駆け出した。
木が燃える匂いに混じって微かに血の匂いもする。
「Aちゃん!」
走っていると、急に名前を呼ばれた
『おばさん!どうして村がこんなことになってるの!?』
よくお世話になっている甘味処のおばさんだった。
おばさんの着物をよく見てみると所々に血がついている。
「鬼が……‼︎鬼が出たのよ…!」
『鬼…?』
「もう村のほとんどの人たちが鬼に食べられてしまって…。
私も今鬼から逃げてきたのよ‼︎」
鬼…?村が燃えているのはその鬼のせいだというの?
「早く逃げないとすぐにっ……」
『おばさん…?』
おばさんが不自然に言葉を止めた。
その瞬間、おばさんは口から一気に血を吐いた。
『え…?』
「ヒヒヒ…この村にはじじいやばばあが多いと思っていたが…
上質な女も残ってるじゃあねぇか‼︎」
おばさんのお腹から貫くようにして腕が生えていた。
『あぁっ‼︎』
完全に腰を抜かしてしまいその場に尻餅をついた。
「ケヒヒヒ…いい声だよなぁ…!やっぱり食うなら若い女だぁ!」
おばさんの体から腕を抜いて私に手を伸ばしてくる。
やけにスローモーションに見えた。
あぁ、そうか。私はここで死ぬのだ。
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作者名:まゆ | 作成日時:2023年5月8日 1時