No.64 ページ15
コンコン
翌日になって、事務所の部屋のソファで雑誌を読んでいると、扉をノックする音が聞こえた。
チラリと奥にいる彼を見ると、相変わらずあの不気味な笑顔を向けている。
…昨日言ってた人か。
その笑顔から勝手に解釈し、扉の向こうの人物にどうぞと声をかける。
がチャと扉が開き、入ってきたのは大切な、大切な家族だった。
自然と鼓動が早くなるのが分かる。
あれだけ会いたくても会えなかった、あたしの大切な家族。それが今、目の前にいる。
嬉しくて、涙が零れそうになった。
「…何か御用ですか？」
だけど、あたしの口からは思っても無い言葉が飛び出す。
あたしのその一言に、彼らがとても傷ついた顔をしたのが分かって、必死に違うと言いたかった。
その言葉を訂正したかった。でも、その言葉はあたしの口からは出ない。
奥で、ジョングクが静かに涙を零したのが分かった。
TH「…ヌナだよね…？Aヌナだよね？！」
「…あたしはAですが、あなた方のヌナではありません。」
彼らの中から、テヒョンが1歩前に踏み出し泣きそうな顔であたしの前に立ち尋ねる。
だけど、あたしの口からは彼らを傷つける言葉ばかりが出ていく。
…こんなはずじゃないのに。
そんな風に思っても、あたしには何も出来なかった。
目の前で、テヒョンが崩れ落ちてもあたしはただそれを見下ろすことしか出来なかった。
そんな彼にジミンが優しく寄り添うのを見て、相変わらず優しいなと、そんな事を思う。
TH「…やっと会えたと思ったのに…。」
「何かの勘違いでは？…あたしはあなた方と家族になった覚えはありませんので。」
ホントは、こんな言葉言いたくないのに。
ホントは、今すぐにでも彼らに謝って、もう一度家族になりたいのに。
だけど、それは昔のあたしに邪魔される。
独り寂しくベランダで過ごした“あたし”が、あたしが幸せになる事を許さない。
あたしは“あたし”の心の片隅にしか存在しない。
JM「Aヌナ！もう嘘を付かないでよ！！…お願いだよ…」
ジミンが泣きながらあたしを睨む。
もちろんその睨みが憎しみではないことは分かる。
だけど、あたしは“あたし”から抜け出す事が出来ない。“あたし”がそれを許さない。
「ホントにしつこい。…あなた達になんか、出会わなきゃよかった。」
こうやってあたしは嘘を吐く。
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みんぎ ARMY - のあさんの小説、好きです！ (2020年5月15日 10時) (
レス) id: 0f2332ca0a (このIDを非表示/違反報告)
のあ(プロフ) - さゆみさん» ありがとうございます！ぜひ他の作品も読んでもらえると嬉しいです！ (2020年3月30日 19時) (レス) id: b3b5882682 (このIDを非表示/違反報告)
さゆみ - とてもいい話で感動してずっと泣いてました！ (2020年3月17日 0時) (レス) id: 30b5ba8ba9 (このIDを非表示/違反報告)
のあ(プロフ) - ロゼさん» ありがとうございます！！！！感激です…！ (2020年1月17日 6時) (レス) id: b3b5882682 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ - 新作も読ませて貰いますw (2020年1月16日 22時) (レス) id: e951c39958 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：甘塩爺 | 作成日時：2019年12月27日 12時
