アメフリレインボウー2ー (ページ8)

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#8 nimbostratus ページ8

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窮屈な熱気から解放されて降りた駅。

かと思えば、今度は改札の向こうから

お祭り終わりの帰宅ラッシュの波に巻き込まれ

やっと外に出た頃には体は疲労感に包まれていた。

落ち着いて見慣れた道を歩き始めたのは21時頃。

空には紺青が広がり、そこには星など見えないけれど

それでも街に灯る光が夜を明るく照らしていた。

『今日ありがとね。付き合ってもらっちゃって』

「こちらこそ。楽しかった」

帰り道、月並みの会話。

隣を歩く彼はどこか遠くの方を見つめていた。

夜の静けさを引き立たせる

二人の間を流れる沈黙の時間。

紡ぐ言葉も見つからずに

流れゆく景色だけを目に映していた私の横で

彼は小さく息を吸ったあと、そっと口を開いた。

『さっきさ、ごめんね』

その一言だけで

具体的な時はまだ明かされていないのに

鎮まっていたはずの波がゆらゆらと揺れ始める。

まだ、わからない。

＂ごめん＂の矛先は、まだはっきりしていない。

脳裏に蘇る光景とジンと疼いた額の熱は

なんてことないものだと振り払おうとする。

だけど、

その先の言葉を待っていた私に与えられたのは

曖昧なものでいて、核心的なものだった。

『その、……近すぎた、よね』

そのぎこちない物言いが

言葉の裏に隠された明確な出来事と

彼の気持ちを表しているような気がした。

「大丈夫！仕方ないよ。あんなに混んでたんだし」

『嫌じゃなかった？』

「うん、全然…だいじょうぶ」

だんだんと駅から離れて

少しずつ明るさを失っていく夜道。

やわらかな風に揺られて擦れ合う木々の囁き。

鈴の音のように儚く響く虫の鳴き声。

それらを感じ取るかのように静かに足を止めた彼を

数歩先で私は振り返った。

「どうしたの？」

俯く彼の様子がおかしいことに気がついて

一歩、二歩と近づいて顔を覗き込んだとき

『本当に嫌じゃなかった？』

夜闇の中で私を映し出した大きな瞳は

微かに揺れ動いているようにみえた。

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