アメフリレインボウー2ー (ページ44)

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#44 pouring ページ44

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──Aちゃん！

高く透き通る声が、脳内でこだまする。

走っても走っても、振り切ることができずに

永瀬くんの声だけが、ずっと離れてくれない。

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ようやく見えてきた見慣れた住宅街。

回し続けた足を緩めて

地面を見つめながら家へと向かっていく。

──Aちゃん

ここまで来ても

永瀬くんの声は私の頭の中で響き続ける。

もう、忘れなきゃいけないのに。

『Aちゃん…？』

俯いていた顔を上げた。

降り続ける雨と睫毛を伝って滴る雫が

視界を滲ませる中、辿り着いた家の前で佇む影。

詰まりそうになった息がスーッと流れていった。

「髙橋くん……」

同時に駆け寄ってきた彼の傘の下で

雨粒が弾けていく音が妙に虚しく響く。

『何でこんなびしょ濡れなの！？風邪ひくよ！』

今さら傘なんて何の意味もない。

そんなの、また永瀬くんを思い出すだけ。

頬に優しくあてられた小さなハンカチタオルは

ほんのり冷たい。

「髙橋くんこそ、どうしたの？何かあった？」

たまにバイト帰りに送ってくれる以外

家まで来るなんてこと今までなかったのに。

それもこんな大雨の時に、どうしたんだろう。

『何かあったのはAちゃんでしょ？』

雨音に紛れて届いた

髙橋くんのいつもより低い声。

まるで、何かを知っているみたい。

「何も、ないよ」

目に映るもの、耳に届くもの、感情を邪魔するもの

すべてを遮断してしまいたい。

私にはもう、「何もない」。

『Aちゃん。…俺、Aちゃんに話さなきゃいけないことがあるんだ。』

「悪いけど、また今度にしてくれる…？」

傘の下から抜け出そうと足を踏み出した時

不意に掴まれた腕に身体が引き止められた。

『どうしても、今じゃなきゃダメなんだ。』

深い声色に思わず髙橋くんの顔を覗き込めば

潤った大きな瞳の中には私だけが映し出される。

断れない。そう思った。

「……入って」

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