#33 pouring ページ33
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自分が自分で思うよりもずっと
人間は弱い生きものなのかもしれない。
それとも、私が脆かっただけだろうか。
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平凡で穏やかだった日常はあっという間に消え去り
周囲を取り巻く環境はガラリと変わった。
最初は興味本位で永瀬くんとのことを
聞きに寄ってくる人もいたけれど
気づけば学校内での話し相手はほとんどいなくなり
比較的仲の良かった友達にさえ
距離を置かれるようになった。
派手な使い方はせず地味に存在していた
SNSのアカウントには、どこから見つけ出したのか
バグったのかと思うほどの通知がくるようになり
全く見ず知らずの人たちから浴びせられる言葉は
どれも同じように鋭く尖ったものばかり。
目を通すことにも疲れ、アプリごと削除した。
だけどそんなことをしても現実が変わることはなく
どこにいても白い目を向けられ
根も葉もない噂話が聞こえてくることも少なくない。
その度に反論したい気持ちはあったけれど
──このまま何も言わんでいてくれると助かる
永瀬くんを守ることになるのなら
容赦なく降りかかる強い雨に無防備で耐えることは
私にとってなんてことはなかった。
ありもしない空想を押し付けられ
真実を捻じ曲げられ
架空の物語とそこに存在する自分がどう思われようが
それを否定する権利さえ与えられない。
それでも怯むことなく強くいようと思えるほどの力が
どこから湧いてきていたのかはわからないけれど
時の流れと共に薄らいでいくであろう
悪夢のような現実に負けまいと踏ん張り続けた。
永瀬くんの生きる世界は
時にこんなにも酷なものであるのだと痛感しながら。
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作者名：N | 作成日時：2020年9月16日 11時
