アメフリレインボウー2ー (ページ28)

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#28 pouring ページ28

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朝のチャイムが鳴る直前に

教室に入ってきた永瀬くんはもちろん

逆風下にあるこの現状は把握しているらしかった。

友達か、もしくは仕事関係の誰かしらから

伝えられたのかもしれない。

私と同じように、周囲からいつもとは違った

視線を浴びながら席に着いた永瀬くんとは

この日、一度も目が合うことはなかった。

とはいっても、もともと学校内では関わることも

話すこともほとんどなかったから

お互いいつも通りに過ごしただけ。

ただ自分を取り巻く世界の風向きが変わり

しつこいくらいにチクリと刺さる胸の痛みに

ひたすら耐える一日。

この先のことなんて考えたくもない。

とりあえず今日を乗り越えようと

下校のチャイムと同時に颯爽と教室を出て

人目につかないように早足に廊下を歩いた。

永瀬くんは今、何を思っているのだろう。

私のような平々凡々のただのクラスメイトと

関わったことを後悔しているだろうか。

詰めが甘かったと、自分を責めているだろうか。

見えない敵のような存在に

ただ憤りを感じているのだろうか。

彼はどうなるのだろう。

少なからず仕事に影響を及ぼしてしまうのだろうか。

何か大事なものを失ってしまったりするのだろうか。

無闇矢鱈に傷つけられたりしないだろうか。

何をどういくら考えたって

ちっぽけすぎる私には何もわからなかった。

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教室から下駄箱までの距離を

いつもの倍以上の早さで歩き辿り着くと

その動きを止めることなく

手早く上履きを脱いで外靴を取り出した。

そのとき

目の前をひらひらと落ちていった小さな紙切れ。

咄嗟に拾いあげてみれば

そこには殴り書きされた数字が並んでいた。

何かの暗号でも

早速与えられた嫌がらせでもなんでもない。

一目で電話番号だとわかるそれは

永瀬くんの字で書かれた、彼のものだと

根拠はないけれど、直感的にそう感じた。

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