#find out.49 ページ49
.
何気なく過ごす日々の中で
その時は特別な感情を抱いていなくても
きっといつか
あの頃は楽しかったね、なんて
振り返る日が来るんだろう。
今は気づけない小さな幸せがたくさん詰め込まれた
そんな日々の積み重ねを生きているんだと
なんとなくだけど、そんなことを
ぼーっと考えていたら過ぎていた時間。
講義終了の合図とともに
ぞろぞろと席を立って教室を出ていく学生たち。
その波に流されるように外へ出た瞬間
今日も無駄に爽やかなアイドルスマイルに遭遇する。
いや、きっとこれを遭遇とはいわない。
神宮寺はだいたい1日1回はこうして私の前に現れる。
引き連れてるのか勝手に着いてきてるのか
いつも複数人の女の子付きで。
高校の時もそんなキャラだったといえばそうだけど
大学に入って一段と男らしくなった姿を見た時は
驚いて一瞬言葉を詰まらせてしまったくらいには
確かにイケ散らかしているけれど。
「もう！毎日来なくていいよ！」
『こっちは紫耀に頼まれてんだから』
「絶対そこまでは頼んでないよ！」
紫耀くんという超ハイスペックな彼氏がいながら
他の男に靡いたりしないっつーの。
あまりの出現率に紫耀くんに相談したこともあるけど
「Aちゃんのことは心配だけど、大袈裟かもね」
なんて言って笑っていた。
『あ、今日帰りは？』
「今日は紫耀くんとデートです！ご心配なく！」
アイドルスマイル君に負けないような
満面の笑みをわざとらしく作って向けると
後ろの女子たちの鋭い視線を感じながら
神宮寺の横をすり抜けて足早に門へと向かった。
ふとポケットを震わせたスマホを取り出して
ロック画面に表示された
たった今届いたメッセージに目を通す。
��19時にいつもの場所ね！��
その一文に頬を緩ませたとき
再び通知を知らせて上に並んだ
差出人の異なるメッセージ。
��今日ママもパパも仕事で遅くなるみたいだから
早く帰ってきてね☆門限19時。��
一度スマホから目を逸らして
薄暗くなり始めた夕空に浮かぶちぎれ雲を眺める。
深い溜息を吐き出したあと
握りしめたスマホの画面をタップして
一方のメッセージにだけ返信をすると
人の行き交う、駅へと続く道に飛び出すように
目の前の大きな門をくぐり抜けた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 644人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「平野紫耀」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
