#find out.47 ページ47
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何度も繰り返される季節。
明けない夜がないように
どんなことがあろうと
それは周り回ってまた必ず訪れる。
校舎を出れば目の前に広がる並木道。
今年も蕾をつけ始めた桜の木の下を
着慣れた制服を身につけて歩くのもこれで最後。
なんだか名残惜しくて
ふと立ち止まって見上げた大きな木の
幾重にも交じり合う枝の向こう側には
清々しい真っ青な空が広がっていた。
『A〜！おまたせ！』
よく通る声に名前を呼ばれて振り返れば
校門を抜けた辺りで着衣の乱れた神宮寺が
私に向かってバカみたいに大きく手を振っていた。
そしてその隣には
「紫耀くん！」
いつも通り少しだけ着崩した制服姿に
片方の手には黒い丸筒を持って
春空のような明るい笑顔が向かってくる。
『あれ？俺のこと見えてる？』
「どうしたの、そんなにはだけちゃって」
チラチラと見え隠れする神宮寺の上半身。
ブレザーも下に着ているワイシャツも全開で
よく見ればボタンが全てなくなっていた。
『全部持ってかれた』
「この時代まだそんなこと起こるんですねぇ」
『お前バカにしてんだろ』
卒業式の日に好きな人のボタンを貰うなんて
漫画とかドラマの中の話だと思っていたけれど
目の前の神宮寺を見るとどうやら現実らしい。
それに比べて、ボタンどころか
身につけているもの全てをかっさらわれて
真っ裸にされそうな紫耀くんは意外にもいつも通り。
不思議に思って目をぱちぱちさせていると
また聞いてもいないのに神宮寺が
私の抱いていた疑問を勝手に解決してくれた。
『紫耀は必死に逃げ回って守り抜いたんだよ！
最終的には囲まれてもう謝罪会見してたけど』
思わず「えっ」と漏れた声と同時に
紫耀くんに視線を移せば
困ったように笑いながら
「Aちゃん以外の女の子にあげるのは……ね？」
少し遠回りな甘い言葉と、その眼差しに
急に込み上げてくる嬉しさと恥ずかしさで
何て返していいかもわからない私は
きっと紅くなっている顔を隠すように俯く。
『…お前ら俺の存在消すのやめろ』
神宮寺の少し拗ねたような声がおかしくて
紫耀くんと顔を見合わせて
次に神宮寺にチラッと目線を配ると
誰からともなく溢れた3人の笑い声が
あたたかい春を運ぶ風に乗って
どこか遠くの空へと運ばれていった。
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
